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理論化学
化学講座 第4回:第一イオン化エネルギーと第nイオン化エネルギー

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前回は、どのような原子が電子を引きつける力が強いのかについて説明しました。
今回と次回は、電子を引き付ける力に関する値について説明します。

最初に説明する用語をまとめておきます。

  1. 第一イオン化エネルギー
    原子の最外殻電子1つを取り去って一価の陽イオンにするのに必要なエネルギー。
  2. 電子親和力
    原子が電子を1つ、最外殻に取り込んで一価の陰イオンになるときに発生するエネルギー。
  3. 電気陰性度
    共有結合の際に共有電子対を引き付ける力の大きさの尺度。現在はポーリングという人が作った値を採用しています。希ガスは共有結合をしないので電気陰性度を定義できません。
  4. 第nイオン化エネルギーn-1価の陽イオンから最外殻電子を1つ取り去るのに必要なエネルギー。

第一イオン化エネルギーと電子親和力は最外殻の電子をやり取りする時に生じるエネルギー、電気陰性度は電子を引き付ける力の大きさの尺度です。
今回は第一イオン化エネルギーと第nイオン化エネルギーについて説明します。

第一イオン化エネルギー

電子はクーロン力で原子核に引きつけられていますから、これを引き剥がして陽イオンにするためには、エネルギーが必要になります

中性の原子の最外殻電子を1つ奪って、1価の陽イオンにするのに必要なエネルギーを第一イオン化エネルギーと言い、この値が大きい原子ほど陽イオンになりにくく、小さい原子ほど陽イオンになりやすくなります。

NaとClとArを例にして第一イオン化エネルギーについて考えてみましょう。Naは電子を引き付ける力が弱く、陽イオンになりやすい元素でしたね。ですから、最外殻電子を奪うにはあまり大きなエネルギーを必要としません。ちょっと引っ張れば、ぽろっと取れます。

ナトリウム原子とナトリウムイオン

一方、Clはどうでしょうか。Clは電子をほしがっている元素ですから、なかなか電子を手放してはくれません。そこから最外殻電子を引き剥がすのは大変です。

塩素原子と塩素陽イオン

では、希ガスのArはどうでしょうか。希ガスは原子の状態で非常に安定ですから、陽イオンにするために最外殻電子を奪おうとすると、塩素の場合よりも大きなエネルギーが必要になってしまいます。

アルゴン原子とアルゴン陽イオン

このように、周一周期で比較した場合、族番号が大きくなるほど電子を引き付ける力が強くなるため第一イオン化エネルギーも大きくなり、希ガスで最大値を取ります。

次は、同じ族の原子で比べてみましょう。同じ族だと最外殻電子数は同じですから、電子を引き付けることができる原子核の電荷は全て同じです。しかし、周期が大きくなると、原子核と最外殻電子の距離は大きくなりますね。

最外殻電子を引き付けている正電荷の大きさは、(原子核の陽子数)―(内殻の電子数)で表されます。

そうすると、同じ族で考えると最外殻電子を引き付けている陽子数は同じになります。アルカリ金属を例にとって説明しますね。

あ、内殻というのは最外殻より内側の電子殻の事で、Liなら最外殻がL殻ですから内殻はK殻、Naは最外殻がM殻なので、内殻はK殻とL殻です。

最外殻電子を引き付けている電荷の大きさ

どうですか。原子番号が大きくなって陽子数が多くなっても、最外殻電子を引き付けている電荷の大きさは陽子1つ分で変化しませんね。

このように原子核を取り巻いている内殻の電子が陽子の電荷を打ち消すことを遮蔽と言います。

クーロン力は距離の二乗に反比例しますから、周期が大きくなるほど最外殻電子を引き付ける力は弱くなり、従って第一イオン化エネルギーは小さくなり、陽イオンになりやすくなります。

周期が大きくなるほど陽イオンになりやすくなる

このように、同一周期であれば族番号が大きいほどイオン化エネルギーが大きく、同一族であれば周期が小さいほどイオン化エネルギーが大きくなります。 実際、原子番号を横列、イオン化エネルギーを縦列にとってグラフを描くと、下図のようになります。

周期グラフ

このグラフについて説明していきます。まず、同じ周期の中で比較すると、希ガス元素の第一イオン化エネルギーが極大になっていますね。

周期グラフ

また、各周期の希ガス元素を比較すると、周期が大きくなるほどイオン化エネルギーが小さくなるのがわかりますね。

周期グラフ

第一イオン化エネルギーは族番号が大きく、周期が小さいほど、すなわち周期表の右上の方にある元素ほど大きい。

周期表

第nイオン化エネルギー

ところで、第一があるということは、第二、第三イオン化エネルギーもあります。

第二イオン化エネルギー
(原子の最外殻から2個の電子を奪う時、2個目の電子を奪うのに必要なエネルギー)
第三イオン化エネルギー
(原子の最外殻から3個の電子を奪う時、3個目の電子を奪うのに必要なエネルギー)

つまり、第nイオン化エネルギーというのは、中性の原子の最外殻から電子を1つずつ奪っていくとき、n個目の電子を奪い取るのに必要なエネルギーです。最近は、この第nイオン化エネルギーについての問題も出題されるようになりました。

例としてAlイオンのイオン化エネルギーを図にすると、下図のようになります。

Alイオンのイオン化エネルギーの図

第四イオン化エネルギーが第一イオン化エネルギー~第三イオン化エネルギーよりめちゃくちゃ大きな値になっていますよね。これはなぜでしょうか・・・。それはAlは最外殻電子数が3個なので、Al3+は希ガス型電子配置になっているからです。従ってAl3+の最外殻から電子を奪うのは大変大きなエネルギーが必要なのです。

では、ちょっとクイズです。第三イオン化エネルギーが第一、第二イオン化エネルギーよりずっと大きい第三周期の元素は何でしょうか?

もうわかりますよね。そうです。Mgです。Mgは二価の陽イオンMg2+が希ガス型の電子配置になっていますから、第三イオン化エネルギーはものすごく大きな値になるわけです。

 
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