国公立大学医学部 一般入学試験(前期・後期)
1.国公立大学医学部(前期日程・後期日程)の出題科目と配点
国公立大学医学部(前期日程・後期日程)は、センター試験と個別試験の2回の試験で実施され、その合計点で合否が判定されます。
配点はセンター試験と個別試験がほぼ1:1になっている大学がほとんどですが、センター試験に比重が置かれている大学や個別試験に比重が置かれている大学があります。
例えば、徳島大学はセンター試験が900点に対して個別試験は400点、しかも個別試験は英語と数学のみですから、センター試験での得点が合否に大きな影響を与えます。一方、京都大学はセンター試験が250点に対して個別試験が1000点と個別試験の得点の方が大きく、足切りにさえかからなければ、センター試験が多少できなくても合格ラインに達する可能性はあります(ただし、センター試験で900点満点中630点以上の得点を取らないと採点対象になりません)。
近年はセンター試験重視の大学が減少し、個別試験重視にシフトしています。例えば信州大学は、以前はセンター試験900点、個別試験100点でしたが、現在はセンター試験450点、個別試験600点、とセンター試験と個別試験の割合が逆転しています。
国公立大学医学部配点(前期日程、センター試験偏重の大学)2015年度
大学 | センター | 個別試験 | 合計 | 個別試験配点 |
---|---|---|---|---|
香川大学 | 900 | 600 | 1500 | 英語200、数学200、理科(2教科)200 |
佐賀大学 | 630 | 400 | 1030 | 英語80、数学80、理科(2教科)80 調査書100、面接80 |
山口大学 | 900 | 600 | 1500 | 英語200、数学200、理科(2教科)200 |
鳥取大学 | 900 | 500 | 1400 | 英語200、数学200、面接100 |
秋田大学 | 550 | 400 | 950 | 英語100、数学100、面接200 |
徳島大学 | 900 | 400 | 1300 | 英語200、数学200 |
国公立大学医学部配点(前期日程、個別試験偏重の大学)2015年度
大学 | センター | 個別試験 | 合計 | 個別試験配点 |
---|---|---|---|---|
京都大学 | 250 | 1000 | 1250 | 英語300、数学250、理科300 国語150 |
広島大学(A日程) | 900 | 1800 | 2700 | 英語300、数学300、理科1200 |
広島大学(B日程) | 900 | 1800 | 2700 | 英語600、数学600、理科600 |
千葉大学 | 450 | 1000 | 1450 | 英語300、数学300、理科300 |
名古屋大学 | 900 | 1650 | 2550 | 英語500、数学500、理科500 国語150 |
東北大学 | 250 | 950 | 1200 | 英語250、数学250、理科250 面接200 |
センター試験出題科目
センター試験は英語(リスニング含む)、数学2科目、理科2科目、国語、社会1科目が課されます。問題となるのが社会で、現代社会、政治経済や倫理が使える大学と使えない大学があります。
現代社会、政治経済、倫理が使える大学は新潟大学、弘前大学など16校、倫理政経でないと受験できない大学は東京大学、東京医科歯科大学など25校です。琉球大学は現代社会、倫理政経のどちらかで受験できますが、現代社会や政治経済を使うことができません。
他にも、世界史Aや日本史A、地理Aで受験できる大学も弘前大学や群馬大学など6校があります。
センター試験の点数の取り方でも解説していますが、社会の点数は900点中の100点に過ぎませんが、全体で90%を取ろうとすると、その点数の影響は非常に大きなものになります。特に、国語や数学や英語などの科目に弱点を抱えている人にとって、社会はその点数の補てんをするために非常に重要な科目になるのです。
●世界史B、日本史B、地理B、倫理政経
: 東京大学、東京医科歯科大学など27校
●世界史B、日本史B、地理B、現代社会、倫理政経
: 琉球大学
●世界史B、日本史B、地理B、現代社会、倫理、政治経済、倫理政経
: 新潟大学、浜松医科大学など12校
●世界史A、世界史B、日本史A、日本史B、地理A、地理B、現代社会、倫理、政治経済、倫理政経
: 弘前大学、群馬大学など10校
個別試験出題科目
前期日程では数学・英語・理科2科目という大学が多く、東京大学、京都大学、名古屋大学のようにこれに国語を加えた5科目という大学もあります。一方、鳥取大学、秋田大学、徳島大学のように、英語・数学のみで受験することができる大学もありますので、2次試験の理科がどうしても不得意という人は、これらの大学を受験校の候補とすると良いかもしれません。
また、二次試験は難易度がまちまちです。大学ごとに癖がありますから、どのような問題が出ているか(内容はわからなくても文章の長さとか、形式とか)を知るためにも春先に一度過去問を見ておくと良いと思います。
前期日程では小論文を課す大学はありませんが、面接を課す大学があります。ただ、面接の内容は推薦・AO入試のように厳しいものではなく、ごく一般的な内容(医師の志望理由、本学志望理由など)です。ただし、面接の結果を得点として計上する大学もあります。そうでない大学でも面接が余りに悪いと不合格にされることがありますから、過去問を見て、一度は練習しておくと良いでしょう。
2.国公立大学医学部(前期日程・後期日程)倍率の変化
国公立大学医学部(前期日程・後期日程)の志願者倍率は、6年前からほぼ横ばい(やや増加)になっています。前期日程で5倍~5.5倍、後期日程で20倍程度です。ただし、センター試験による足切りが行われますから受験者倍率は前期で3倍~5倍、後期で10~15倍程度になります。
前期日程は、志願者数こそ1900人ほど増加しましたが、その分募集人数が増加している事から倍率は抑えられています。一方、後期日程は、廃止・縮小する大学が増加しており、募集人数が減少しています。受験できる大学が減ったことから志願者数も減少し、結果として倍率は目立った変化をしていない、という状況です。
センター試験のボーダーがかなり明確に発表されている事、足切りがある事などから、今後も募集人数の大きな増加は無いと考えられます。
国公立大学前期日程・後期日程倍率の変化
前期日程 | 後期日程 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
募集人数 | 志願者数 | 志願倍率 | 募集人数 | 志願者数 | 志願倍率 | |
2015年度 | 3,658 | 18,999 | 5.19 | 586 | 11,047 | 18.9 |
2014年度 | 3,619 | 19,919 | 5.50 | 611 | 12,586 | 20.6 |
2013年度 | 3,592 | 19,674 | 5.48 | 651 | 12,813 | 19.7 |
2012年度 | 3,591 | 20,483 | 5.70 | 670 | 14,103 | 21.1 |
2011年度 | 3,570 | 19,023 | 5.33 | 675 | 13,717 | 20.3 |
2010年度 | 3,576 | 17,177 | 4.80 | 685 | 12,693 | 18.5 |
2009年度 | 3,393 | 17,041 | 5.02 | 723 | 12,653 | 17.5 |
3.国公立大学医学部入試(前期日程、後期日程)の難易度
国公立大学医学部(前期日程、後期日程)の難易度は、センター試験での得点率が前期日程で85~90%、後期日程で90%以上です。二次試験の難易度も高く、記述試験での偏差値が65以上でないと合格点を取るのは難しいと考えられます。
センター試験で90%程度を取るためには、大きな不得意科目を作らないことと、満点を狙える科目をいくつか持つことが大切です。大きな不得意科目(たとえば70%程度しかとることができない)があると他の教科の足を引っ張ってしまって90%に到達するのは難しくなります。一方、満点を取れば、余剰の点数を他の科目に回すことができ、弱点科目の点数をカバーしてくれるのです。
また、志願者が多くなった時、センター試験の成績順に足切りが行われます。センター試験の結果が良くなかった人に個別試験を受験させないという仕組みで、答案をしっかりと採点するための時間的余裕を取るために行われます。
足切りは前期で募集人数の3倍~5倍程度で行われ、それより多くの志願者が集まった場合は、倍率が3~5倍になるように調整をします。後期試験では15~20倍程度で実施されます。一部の大学では実施しませんが、そうした大学は単純に倍率が高くなりますので、センター試験の得点が、他大学で足切りにかかってしまうようなら、合格する可能性はかなり低いと考えられます。
国公立大学医学部前期・後期試験(センター試験合格者平均点、2015年度:抜粋)
前期日程 | 後期日程 | |||||
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平均点 | 満点 | 得点率 | 平均点 | 満点 | 得点率 | |
旭川医科大学 | 462.7 | 550 | 84.1% | 477.1 | 550 | 86.7% |
秋田大学 | 470.38 | 550 | 85.5% | 630.85 | 700 | 90.1% |
新潟大学 | 680.4 | 750 | 90.7% | |||
三重大学 | 529.04 | 600 | 88.2% | 538.12 | 600 | 89.7% |
大阪大学 | 461.67 | 500 | 92.3% | |||
広島大学(前期A) | 809 | 900 | 89.9% | 840 | 900 | 93.3% |
徳島大学 | 805.1 | 900 | 89.5% | |||
宮崎大学 | 757 | 900 | 84.1% | 803 | 900 | 89.2% |
大阪市立大学 | 592.9 | 650 | 91.2% | 86.7% |
センター試験足切り(2016年度入試要項より抜粋)
募集人数 | 前期日程 | 募集人数 | 後期日程 | |
---|---|---|---|---|
北海道大学 | 97 | 倍率3.5倍 | ||
新潟大学 | 85 | なし | ||
山形大学 | 90 | 倍率4.5倍 | 10 | 倍率10倍 |
群馬大学 | 73 | 倍率3倍 | ||
筑波大学 | 69 | なし | ||
岐阜大学 | 32 | 倍率15倍 | 35 | 倍率15倍 |
名古屋大学 | 90 | 倍率3.5倍 | 5 | 倍率8倍 |
三重大学 | 75 | 倍率5倍 | 10 | 倍率10倍 |
京都大学 | 102 | 倍率3倍 630/900以上を採点対象とする |
||
広島大学 | 75 | 倍率10倍 | 20 | 科目のいずれかが受験者平均の60%に達しなかった場合は不合格 |
鳥取大学 | 55 | なし | 20 | なし |
琉球大学 | 70 | 倍率5倍 | 25 | 倍率5倍 |