2.医学部受験を決めたころ~高校時代の勉強について~

名古屋大学医学部医学科 井岡 大河君

ここでは具体的に、私が現役時代・浪人時代に経験した3つの勉強法やモットーをお話ししようと思う。

まず第一に、勉強しないと落ちる。これでは大学に受かるはずもない。ただ、自分は高校時代あまり勉強できていなかったと思う。私は趣味のピアノに打ち込んでいたこともあり、それを理由にして勉強をサボっていたところもある。そもそも勉強が楽しいとは思えずあまりやる気にならなかった。これもひとえに「どうしても医学部に行きたい」というモチベーションがなかったためだろう。浪人した時は「自分は今無職だ、今悪いことしてお巡りさんのお世話になったら『19歳の無職』だ」「このままズルズルと浪人生という名の無職ではマズい、大学に受からねば」といった背水の陣のような気持ちで臨んでいたので、やはりモチベーションは大事だと思う。これに尽きる。

第二に、時間にルーズになってはならない。私が通っていた高校は1月の終わりには授業が一通り終わり各自自宅で勉強するようになるのだが、これが私にとっては良くなかった。朝起きるのは辛い・・・と10時に起きる。当然勉強する時間が減るので、夜になってもやろうと思っていた勉強が終わらない。結局2時3時まで勉強して、翌朝をまたしても眠い目で迎える・・・と負のサイクルが繰り返されることになる。試験は朝早くに始まって、夕方6時には終わるのだからそれに合わせた朝型の勉強をするべきだ、と浪人を迎えた私は思った。「家にいるとネットやゲームなどなどたくさんの欲望があって集中できないから」と言って予備校や塾・学校に自主的に通ってきちんと朝から勉強している同期や友達もいたが、自分を律してきちんと朝起きて黙々と勉強できる人ならば無理に寒い中朝の電車に揺られて通うこともないとは思う。浪人していた時の自分はとにかく「このままではダメだ」という焦りにも似た強さがあったので毎日予備校で勉強するといったことはなかったが、とにかく時間を守った勉強法はするべきだと思う。時間は社会が取り決めた概念である。時間を守れない人間は社会の取り決めに従えない人間にも等しい。受験は社会と隔絶しては成功しえないと思う。とにかく時間にルーズになってはならない。

そして最後に、積み残した課題を作らない。これは現役生によくあることなのだが、いかんせん高校の授業の進み具合や学習進路に従って勉強していると受験に間に合わなくなることが多い。それゆえ不得意な分野―例えば化学での有機化学全般や数学での整数問題―をそのままにして残しておくと、それが積み残し課題として残ったまま受験当日を迎え、運悪くその分野が出題されるといった悲劇が起こりうる。「完璧を目指すより、まず終わらせろ」という言葉があるが、まさにその通りだと思う。簡単な数学の話に帰着させて考えると、私は「とりあえず6割終わらせろ」をモットーに勉強をしてきた(今もしている)。具体的には、とりあえずまず1周目にやるべきことの全体の6割を完璧にする。そして2周目で残りの4割のうちの更に6割を完璧にさせてしまえば、それだけで84%を完璧に出来るのだ。何か得意な分野を100%にして、その分苦手な分野は捨ててしまう―ほぼ0%にしてしまう―といった勉強をしていると、試験で得意な分野が出た時はA判定なのに苦手分野が出るとからっきし・・・などといったようにムラが出来てしまう。こういった状態では「試験本番で苦手分野が出ませんように」とただ祈るだけになってしまう。それぐらいなら6割からの6割で84%を目指したほうが良いに決まっている。ただしここで注意してもらいたいのは、84%まで達した時にさらに残りのうちの6割を完璧にこなして・・・と繰り返して完全に100%にしようとはしないことだ。何度も繰り返しても出来ないことは出来ないし、それを無理にこなそうとするのは非効率的だ。それぐらいならば他の分野、ひいては他の科目に関して同じように6割をこなしていったほうがいい。

以上のようなモットーを持って勉強に取り組んできた。もちろん中にはここに記したやり方は自分には合わないだの間違っているだのといったことはあるだろうが、そこは各々が考える自分のやり方で勉強してほしい。何より自分のことを分かっているのは自分なのだから。自分で自分を律して勉強する、その姿勢が大事であるのは言うまでもない。