私は4年前の春、2012年3月に名古屋大学医学部に合格し、順調に大学に通っている埼玉出身の大学生だ。私は1年間の浪人生活を経て今大学生になっているのだが、現役受験の時―それはもう惨憺たるものだった。大学には落ちる、予備校に通おうとしたのはいいものの、予備校の下見に行ったその日の午後に東日本大震災に遭う、インフラが壊れる、卒業式は自粛になる、などなど・・・。しかしながらそういった経験もまた、その結果の先にあった名古屋大学医学部合格に繋がっている、いや繋がっていて欲しいし、何かしら意味があったと思いたいので、浪人の経験も踏まえて、私の受験生活やポイントをまとめて書いていこうと思う。

4000字を超える長文となるものだから、1.医学部を志した理由・医学部受験について 2.高校時代の勉強について 3.受験時代の勉強方法について と大きく3つに分けてお話しできればと思う。4年前の体験であるため、現在の受験の実状とは違ったものとなっているところもあるだろうが、参考程度に見ていただければ幸いである。

1.医学部を志した理由・医学部受験について

名古屋大学医学部医学科 井岡 大河君

よく「どうして医学部に行ったのですか?」「どうして医者になろうと思ったの?」などと人に聞かれる。だが、正直言ってこの質問に私はうまく答えることが出来なったし、今も答えられる自信はない。面接用で問われた時のために考えた「私は社会に貢献したいと常日頃思っていて、そう考えた時に医療は人と直接向き合うことが多く、やりがいのある仕事だと考えたからです。」といった外向きの理由は今になって考えてみると「社会にはもっとやりがいのある仕事はあるよ。見識が狭いよ。」と当時の自分に言ってあげたくなるぐらい稚拙な理由だし、当時は親にもひた隠しにしていた「兄も名大医学部に通っているからなんとなく」「食いっぱぐれなさそうだったから」といった内向きの理由もまた、今になって思うと幼稚な考えだったな、とは思う。ただそういったことも踏まえて今「なぜ医師になろうと思ったのか」と問われると答えに貧す。それでも受験当時の私は「医師になって社会に貢献するんだ」「兄のような医師になるんだ」「お金欲しい」といった気持ちをモチベーションにしていたし、そういう志望理由をただひたすら信じて疑いもせずに勉強していた。結局のところ、医学部を志す理由は何でも良くて、何かしら「医学部に入りたい」という熱心な気持ちを自分が持つに足る、そういう根拠を見つけ出せればよいのではないかと思う。

当時の医学部受験の実状はといえば、学生の理系離れ・医学部指向・少しずつ増えてきた理系指向といった大きな流れの只中にあり、医学部は志望者が多くなっていた時代であった。先にも触れた兄(私の4年前に同大学医学部に合格した)の受験当時は名大医学部の倍率が2.7倍だったにもかかわらず私が受験した時には4.3倍に膨れ上がっていたし、受験の時期にはコンビニに「子供を医学部に入れる方法」などといった魅力的な言葉を並べた雑誌が並んでいた。少なくとも医学部が人気であったのは間違いなかったように思う。