私立大学 推薦入試の概要とデータのみかた
(2016年6月14日更新)

試験概要
① 出願要件
私立大学推薦入試の出願の可否は、評定平均値、卒業年度、出身地域によって決まります。
出願要件その①:評定平均値
制限なし | 藤田保健衛生大学(公募) 近畿大学(公募) 川崎医科大学(中国・四国地域枠) 川崎医科大学(岡山県地域枠) |
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評定平均値3.7以上が必要 | 愛知医科大学(公募) 福岡大学(地域枠) 福岡大学(A方式(公募)) |
評定平均値3.8以上が必要 | 埼玉医科大学(指定校) 金沢医科大学(公募) 久留米大学(一般推薦入試) 久留米大学(地域枠) |
評定平均値4.0以上が必要 | 岩手医科大学(公募) 埼玉医科大学(一般公募) 獨協医科大学(地域枠) 東京医科大学(公募) 東京医科大学(山梨県地域枠) 東京医科大学(茨城県地域枠) 聖マリアンナ医科大学(指定校) 金沢医科大学(指定校) 兵庫医科大学(公募) 関西医科大学(公募) |
評定平均値4.1以上が必要 | 東京女子医科大学(公募) |
評定平均値4.3以上が必要 | 岩手医科大学(地域枠) 産業医科大学 |
※藤田保健衛生大学は2017年度入試より評定平均4.0以上が必要
私立大学医学部推薦入試は、評定平均値の制限が国公立大学よりやや緩やかで、近畿大学は評定平均値の制限がなく、ほかは3.7以上から受験することができます。(川崎医科大学は、評定平均値の制限がありませんが、出身地域などの条件が厳しい。)
出願要件その②:卒業年度
半数以上の大学で、1浪まで受験が認められていますが、2017年度入試から藤田保健衛生大学が現役のみ(数年前までは2浪まで認めていた)となるなど、浪人生の推薦入試利用は徐々に厳しくなってきています。
これは、受験者数が増加したことと、近年の医師国家試験の難易度上昇から、できるだけ年齢が若く、能力の高い人を集めたいという大学の思惑によるものと推測されます。
出願要件その③:出身地域
私立大学医学部の推薦入試で、地域枠となっている大学がありますが、地域枠は基本的にその大学の所在する地域に貢献する人材を集めるもので、受験者はその地域の出身者に限られます。
例外は久留米大学の地域枠で、卒業後、福岡県及び周辺地域の臨床研修病院において初期臨床研修を行い、修了後、本学が指定する医療機関において4年間地域医療の発展に貢献する強い意志のある者、であれば、出身地域を問わず出願することができます。
合否判定の基準
大学により、合否判定の具体的な基準は異なりますが、大雑把にいうと、次の3つの基準によって判断しています。
大学としては、学力がなければ医師になるための勉強に支障をきたし、人格が円満でないと入ってから教育するのに苦労し、強い熱意がないと挫折してしまうので、これらの要素を持っている人を集めたいと考えているのです。
つまり、医学部推薦入試に合格するために必要なのは、「常識的である」ことなのです。
決して特別な力やテクニックが必要というわけではありません。
- ① 高い学力
- ② 円満で安定した人格
- ③ 医師になるという強い熱意
では、これらをどのように判定しているのかというと、学力は適性検査(学力試験という言葉は、ルール上使えないので、適性検査と呼んでいます。普通の学科試験です。)と小論文によって、人格と熱意は、調査書と推薦書、それから面接によって判定します。
これも大学によってまちまちですが、配点は、一般入試より面接・調査書・推薦書・小論文にウエイトが偏っており、合計得点の40%程度がこれらに配点されていることがおおよいようです。
ところで、私立大学医学部の推薦入試は、基本的に「その地域の医療を支える臨床医となる人材を集める事」にあります。例えば、関西医科大学の募集要項にははっきりとそれが書いてあります。(臨床研究のようなものはありだと思います。)ですので、基礎研究志向の人は基本的に受験しないほうがいいでしょう。
学科試験の内容
学科試験は、理系科目は一般入試よりやや簡単で、どの大学も英語に重点が置かれています。ですので、推薦入試では英語+面接+小論文で合格したという人が相当います。
出題傾向は、大学によって異なりますが、大きく分けると
- ① 一般入試と似た傾向(一般入試の過去問研究が有効です)
- ② 一般入試と異なる傾向の学科試験、例えば福岡大学のようにかなり簡単な問題だったり、東京医科大学のように理科3科目が出題されるなど。
- ③ 高校で学ぶ知識を基本とした適性検査があります。例えば、東京女子医科大学や関西医科大学では、一般常識問題や、高校で学んだ知識を前提として考えさせる問題などが出題されます。
※各大学の傾向については、今後、コラムで取り扱っていきます。
一般入試と似た傾向 | 岩手医科大学 聖マリアンナ医科大学(英語のみ) 愛知医科大学 藤田保健衛生大学 近畿大学 兵庫医科大学 久留米大学 |
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一般入試と異なる傾向 | 獨協医科大学 埼玉医科大学 東京医科大学 金沢医科大学 関西医科大学 福岡大学 |
高校で学ぶ知識を基本とした適性検査 | 東京女子医科大学 関西医科大学 川崎医科大学 |
試験の時期
試験の時期は、11月上旬~12月上旬の1か月ほどの間に行われます。近畿大学を除くすべての大学が専願なので、日程の重複などは考えなくてもよいでしょう。
私立大学医学部推薦入試の倍率
私立大学医学部推薦入試の倍率は、一般入試より低く、評定平均値の縛りのない藤田保健衛生大学と近畿大学を除くと、ほとんどの大学で1桁台です。
このことから、推薦入試は一般入試より合格しやすいと言われていますが、入試問題が一般入試と異なること、小論文や面接が重視されることなどから、十分な準備を行っておかないと、合格するのは難しい試験です。
実際、推薦入試に落ちて一般入試で複数校に合格する人もいますので、しっかりとした対策を行うことが大切です。
学習のタイムスケジュール
私立大学医学部推薦入試は、実施時期の関係から、受験するかどうかを早い時期に決めたほうがよいでしょう。
というのも、12月に合否の結果が出るのですが、その1か月後には一般入学試験が始まることになり、推薦入試から一般入試まではほとんど時間がありません。
一方、少し前に書いたように推薦入試はそれなりに対策が必要です。具体的には少なくとも2ヵ月は対策に使ったほうがよいでしょう。
すると、夏休み以降は一般入試の勉強と推薦入試の勉強を並行して行わなければいけなくなります。ですから、夏休みまでにある程度勉強のめどをつけておかないと、受験計画がかなり厳しくなってしまうのです。