東北医科薬科大学 小論文 過去問解析
過去三年間の出題内容
2018年 | 犯罪被害者とその家族、および加害者の人権について、600字以内で述べる。 |
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2017年 | 医療技術の発展が人間の幸せにつながるかということについて、 その問題点と恩恵を600字以内で述べる。 |
2016年 | 医師と科学者の倫理の共通点と相違点について、600字以内で述べる。 |
分析
2016年の開学以来、テーマ型での出題である。2018年のテーマである「犯罪被害者とその家族、および加害者の人権について」では、現在の犯罪報道の姿勢などと絡めて考えると論じやすくなるだろう。この問題では、倫理観や人間性が見られている。2017年のテーマである「医療技術の発展が人間の幸せにつながるか」では、医療技術の発展は人間を幸せにしているか、不幸にしている面はないか、そのように考える根拠は何かを、明確にして述べることが必要である。また、2016年のテーマである「医師と科学者の倫理」では、医学について、医師と科学者という異なる視点から考えられるかどうかを見ている。医師と科学者の共通点と相違点について、自分の考えを根拠とともにわかりやすく論じる力が求められる。
2018年は対照的な立場にある人間の人権について述べるものであったが、加害者の人権への配慮もなされている現状を踏まえて論じる必要がある。2016年と2017年は、共通点と相違点、問題点と恩恵、について述べるという指定があり、対照的な視点から考えて論じればよいことがすぐにわかるので、方向性を決定しやすい。しかし、指定が明確である場合、指定を一つでも落として論じると採点対象にすらならないので、この点は注意すべきである。
東北医科薬科大学は、地域医療に貢献する医師の養成をするために設立され、総合診療医の育成を使命としている。また、「医学、薬学は、人間とその生命にかかわる学問であり、広い視野と豊かな人間性が求められ」るとしている。これらのことから、全人的医療を実践できる素養があるか、常識にとらわれず物事を多面的に捉えて考えることができるかなどを見るテーマが出題されやすいと考えられるだろう。
対策
過去3年間の傾向から、二項対立を押さえて論じるテーマが今後も出されやすいことを念頭に置いて対策をしておくとよい。対立する内容について述べなければならない場合は、どちらに重きを置いて論じるべきかを設問文から読み取り、論点を明確にする。2017年のテーマであれば、医療技術の発展が人間の幸せにつながるかについて問題点と恩恵を述べるとあることから、医療技術の発展において現在どちらが優勢かを考えれば、恩恵に重きを置いたほうがよいとわかる。しかし、2016年の場合のように設問文から判断できない場合もあるだろう。そのような場合は、書きやすい方に重きを置いてまとめればよい。
医療分野だけでなく、それ以外の社会・科学・思想などにも意識を向け、医師としての視点で自分の考えを構築する。また、医療用語についても正確に理解し、それぞれの内容について問題点や課題、解決策などを考えるようにしよう。たとえば、「チーム医療」について覚える場合、チーム医療を行ううえで生じうる問題点や、患者にとってのメリットなどについて考えてみる。このとき、複数の視点から考えることも意識してみよう。そうすることで、自分とは異なる見解について考えることができ、多角的な視野を養成できる。この力が二項対立のテーマで論じるときに役立つのである。医療分野だけでなく、社会分野・科学分野・思想分野などにも意識を向け、医師としての視点で自分の考えを構築していこう。
同じテーマ型で字数が同程度の、関西医科大学、昭和大学、杏林大学などの過去問にあたるのもよいだろう。