埼玉医科大学 小論文 過去問解析
過去三年間の出題内容
2018年 | 一般前期 長文 大問4問 小問合計24問(全問選択肢) 大問1:吉田秀和『ソロモンの歌・一本の木』 大問2:中垣俊之『粘菌 その驚くべき知性』 大問3:野崎歓『翻訳教育』 大問4:広井良典『創造的福祉社会』 内容理解・理由理解・心情理解・空欄補充・ことわざなど |
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2017年 | 一般前期 長文 大問4問 小問合計26問(全問選択肢) 大問1:エブリン・フォックス・ケラー『動く遺伝子』 大問2:杉原厚吉『理科系のための英文作法』 大問3:村越真『人はなぜ道に迷うのか?』 大問4:鯨岡峻『ひとがひとをわかるということ』 内容理解・理由理解・心情理解・空欄補充・四字熟語など |
2016年 | 一般前期 長文 大問4問 小問合計24問(全問選択肢) 大問1:加藤周一『夕陽妄語 第二輯』 大問2:前田英樹『絵画の二十世紀 マチスからジャコメッティまで』 大問3:野矢茂樹『新版 論理トレーニング』 大問4:高橋源一郎『ニッポンの小説―百年の孤独』 内容理解・理由理解・心情理解・内容一致・空欄補充・文脈における言葉の意味など |
分析
小論文とはなっているが、実質現代文の問題となっている。長文が4題で小問数は24~26問、全問選択式の問題である。テーマは多岐にわたり、芸術論・生物学・心理学などやや専門的なものをテーマにしたものから身近なテーマのものまであり、様々である。文章レベルは標準的なものが多く、論理展開も明快であるため、文脈を正確に捉えながら読めばさほど難しいものではない。ただし、文章量が非常に多く、引用文の総字数が10,000字を優に超える量であり、多い年は15,000字を超えることもあり、正確で迅速な情報処理能力が要求される。
文章には図やグラフの入ったものがあり、それらの資料を絡めた問題が出題されることもある。2018年はグラフの読み取り問題が出題されている。教科横断型とも言える問題にも注意すべきだろう。また、ことわざや四字熟語などの国語の知識問題が出題されることもある。
埼玉医科大学はアドミッション・ポリシーの中で「医学を修得するのに必要な基礎学力と問題解決能力のある人」を掲げ、「日本語(語彙、読解力、作文力)に関して基礎的な学力を有する人」を明確に求めていることから、日本語の文章を正確に理解できているかどうかを見ていることは明らかである。大量の文章を読んで正確に設問に答えていくには、文章の重要なところとそうでないところを判断して緩急をつけて読めなければならない。そのためには、論理展開を正確に押さえる必要もある。語彙力・読解力・情報処理能力など、国語の総合力が求められている。
対策
まずは、文章を早く正確に読む力を養成することが必要である。指示語の内容や接続語に注意して、論理展開を捉えるという現代文読解の基本を押さえることが大前提である。この基本を押さえたうえで、問題提起や話題を提示している文、結論・主張を述べている文を捉えることを意識して文章を読むようにする。キーワード・キーセンテンスを正確に捉え、因果関係、対比関係、具体例、引用等に注意して、文章の中心内容を理解する。その際、この文章は何について書いているのか、筆者が最も言いたいことは何か、なぜそのような主張をするのか・なぜその結論に至るのかを押さえられるようになることを目指そう。
随筆の場合は、筆者の体験と感想の読み分け、文学的文章特有の表現や比喩に注意しよう。比喩においては、それが示している内容や比喩を用いた意図も押さえるようにするとよい。
同時に、語彙力の強化を行うことも必要である。言葉の意味を覚えるとともに、わからない言葉はまず文脈から意味を推測し、辞書で意味を確認しよう。桐原書店の『頻出現代文重要語700』などを活用してもいいだろう。
選択肢の精査では、消去法ではなく解答の根拠を明確に捉えるようにすると紛らわしい選択肢を正確に切ることができる。
引用されている文章量が多いため、効率よく問題を解く必要がある。設問文を先に読み、内容をある程度推測して読むようにしてもよい。設問レベルは高いわけではないが、傍線部付近だけでは解答が導き出せない手間のかかる問題もあるため、初めに述べた方法で文脈を正確に捉える力を養成しよう。また、語彙力の強化もしておくとよい。桐原書店の『頻出現代文重要語700』などを活用してもよいだろう。