過去三年間の出題内容

分析

テーマ型の問題で、テーマのみが提示される以外に指定がなく、字数も800字と多めである。テーマは医療を中心としたものが多いが、現在話題となっている社会問題と絡めて考えさせる形式の出題が多い。2018年は働き方改革により注目を集め出したワークライフバランスが出題された。医師のワークライフバランスについては女性医師の働き方について取り上げられることが多いが、医師の応召義務について考えてみるのもよいだろう。2017年は現代社会の大きな問題である「ストレス」について出題された。現代社会におけるストレスは非常に複雑で精神的ストレスだけでなく、肉体的なストレスにも目を向けて考える必要がある。長時間労働による睡眠不足や昼夜逆転した勤務体制、スマートフォンやゲームの使用による自覚のない肉体的ストレスなどにも目を向けると、現代社会の様々な問題と絡めやすくなる。また、2016年は少子高齢化に伴う医療費負担の増加が問題となっていること、また、治療効果が望めなくなった場合、住み慣れた自宅で家族とともに過ごしながら自然に死を迎えるのが人間本来の在り方であるという認識が広まりつつあることにより注目を集めている「在宅医療」について出題された。「在宅医療」は医療費削減という国の立場から見たメリットだけでなく、患者の立場から見たメリットも大きいが、家族の負担が増えるという問題もある。メリットとデメリットを比較して考える。

医療用語についての知識、現在話題になっている医療テーマや医療問題についての関心度、自分が生活している社会への関心度、課題発見力、問題解決力の有無などが見られている。広い見識を持ちながら自分が生活している社会と積極的に関わろうとしているか、問題意識を持っているかなどを見る問題となっている。

久留米大学は「医学や医療の知識と技能を修得できる基礎学力と学習能力がある人」、「診療や研究で実践的に活躍できる人間性・協調性・倫理観がある人」、「時代や社会のニーズに対応できる柔軟性・積極性・向上心がある人」を入学者受入方針として定めていることからも、小論文を通してこの方針に合った人物であるかどうかを見ようとしていることは明らかである。常に向上心を持ち、自己研鑽に励み、高水準の地域医療を提供できる医師としての素養が見られていると言えるだろう。

対策

ごく短いテーマの場合は、どの点に着目して述べるか、どのような方向性で論を展開するかを素早く決定する力が必要となる。日頃から時事問題などに関心を払い、様々な分野から情報を取り入れ、取り入れたものについて複数の異なる視点で考えたり、問題意識を持って考えたりすることが必要である。ニュースを聞く・見ることを意識しよう。時間的に難しいなら、重要ニュースをまとめたものに目を通すということでもよい。

医療用語は意味と内容を正確に理解することは当然であるが、それぞれの医療用語についても問題点や課題などを考えて、様々な視点から考えて自分の考えを確立しておこう。

たとえば、「在宅医療」は「医療関係者が生活の場で行う医療」であり、「通院が困難な患者に対し、自宅あるいは施設などに医療従事者が訪問し、医療サービスを提供すること」などを意味するが、家族の負担や緊急時の対応の問題、医療を行う側が抱える問題などについて考えてみるようにする。患者の視点、家族の視点、医師の視点、看護師の視点など立場が異なれば見えてくるものも異なってくる。様々な立場に立って一つの事柄を考える練習をしておくことは、課題発見力や問題解決力の養成に役立つ。

時間が60分あるので時間的には問題はない。ただし、字数が800字であるため、構成をしっかり組立てていないと論理に矛盾などが生じかねない。序論・本論・結論という流れを意識して構成メモを作る練習、それをもとに小論文を作り上げる練習を行う。

同じテーマ型で字数も同じ800字の杏林大学の過去問は、大学のホームページから過去10年分を確認することができる。これらを用いて対策をしてみるのもよいだろう。