東京慈恵会医科大学 数学 過去問解析
分析表
科目(新課程に準ずる) | 2017 | 2016 | 2015 | 2014 | 2013 | |
---|---|---|---|---|---|---|
数学Ⅰ | 数と式・方程式と不等式 | |||||
2次関数 | ||||||
図形と計量 | ○ | |||||
データの分析 | ||||||
数学A | 場合の数と確率 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
条件付き確率 | ||||||
図形の性質 | ||||||
約数と倍数 | ○ | |||||
不定方程式の整数解 | ○ | |||||
数学Ⅱ | 二項定理・割り算・分数式 | |||||
恒等式・式と証明 | ||||||
複素数と2次方程式 | ||||||
剰余定理・高次方程式 | ||||||
点と直線・円の方程式 | ||||||
軌跡・領域 | ||||||
三角関数 | ○ | ○ | ||||
指数関数・対数関数 | ||||||
微分法と積分法 | ||||||
数学B | ベクトルの計算 | |||||
ベクトルと平面図形 | ○ | |||||
ベクトルと空間図形 | ○ | ○ | ○ | |||
いろいろな数列 | ○ | |||||
漸化式 | ||||||
確率と漸化式の融合問題 | ||||||
数学的帰納法 | ||||||
確率分布と統計的な推測 | ||||||
数学Ⅲ | 複素数平面 | ○ | ○ | |||
式と曲線 | ○ | ○ | ||||
関数・極限 | ○ | |||||
微分法とその応用 | ○ | |||||
積分計算 | ○ | |||||
面積・体積・曲線の長さ | ○ | ○ | ○ | |||
微分法・積分法の融合問題 | ○ | ○ | ○ | |||
旧数学C | 行列 | ○ | ○ |
傾向
大問数は4で、1のみ2題の小問に分かれていて穴埋め、2~4は記述式の大問という形式が続いている。ただし小問といっても穴埋めの箇所はほぼ毎年複数あるうえ、レベル的にも他大学であれば大問で出てもおかしくないものが含まれるため、実質的には5題の問題が出題されると考えた方がよい。これに対して解答時間は90分しかないわけだから、多くの受験生には余裕がないと思われる。
大問1の小問で何といっても目につくのは、2013年度から2017年度まで連続して出題されている場合の数と確率であろう。例えば2015年度の(1)(1)には玉を取り出す独立反復試行の典型的な問題、2016年度の(1)(1)にはカードと玉に対して操作を行う問題が出題されているが、多くの受験生は序盤の「肩慣らし」と感じるであろう内容・レベル・分野であるので、万が一ここでつまずいてしまうと、その問題で失点してしまうということ以上に、集中力が途切れてしまい、他の問題にも影響してしまうかも知れない。この点には特に注意すること。もう1題の小問は全分野から満遍なく出題されているが、特に図形分野からの出題に注意が必要である。2014年度(1)(2)は空間図形の計量であったが、ベクトルと平面図形、複素数平面などから出題される可能性も高い。どの分野から出ても慌てず正確かつスピーディーに処理できるように。
記述式の大問は3題あるが、そのうち1題は数学Ⅲの微分法・積分法から出題されると考えてよい。接線・増減や面積・体積・曲線の長さなど、定番のものは一通り押さえておく必要がある。数学Ⅲのその他の分野からも、2017年度に(4)で複素数平面、2014年度に(2)、2015年度には(3)で式と曲線から出題されているほか、数学Ⅲ以外では2015年度に(4)で座標空間内の図形の方程式、2016年度に(4)でベクトルと空間図形から出題されており目を引く。また、2017年度には(3)で不定方程式の整数解が出題されており、思考力を要する問題であった。今後は新課程で新たに加わった分野であるデータの分析、確率分布からもやや難の問題が出題されるかも知れない。
全体として、超難問が出題されるわけではないが、特に数学Ⅲ分野全般において入試標準~やや難までの問題に対応するため、国公立大学の医学部と同等レベルの、高度で確かな知識が要求される。どこかで一度経験しておかないと方針が立ちづらい問題が多いが、単に演習量を増やしたり、変わったタイプの問題にただ触れたりするだけでなく、内容を深く理解しているかどうかで、結局のところは差がつくと思われる。
対策
基本事項の徹底理解に加え、入試基礎~標準レベルはもちろん、上位の私立大~国公立大学の医学部レベルの問題演習も必要。解答時間内に4大問(実質は5題の問題)に手を付けられるだけの解答スピードと、思考力・記述力を要する問題にも対応できるだけの確かな知識・表現力が求められる。
分野的には、教科書学習時から対策でき、大問1(1)での出題が予想される場合の数と確率、最優先で仕上げたい。難問対策は必要ないので、入試基礎レベルで特に中堅レベルの私立大でよく出題される「ややひねった」問題の解法が系統的・網羅的に学べる問題集(具体的には「Z会数学基礎問題集 チェック&リピート」数学Ⅰ・A(Z会出版))から場合の数と確率の部分に取り組んで基礎固めをしよう。この分野は、他の私立大の医学部でも小問で出題されやすい傾向にあるので、過去問演習の段階に入ったらこういった大学の過去問なども活用して演習量を増やしつつ、知識の穴を埋めていこう。流れをつかんだら、次いで数学Ⅲの微・積分法、極限がらみの融合問題に焦点を当て、同様に学習を進めていくとよい。他大学の過去問は、数学Ⅲを大問で出題する大学のものを用いること。
さて、多くの受験生にとって気になるのは、主に大問1(2)、大問4での出題が予想される図形問題の対策ではないだろうか。前者については入試基礎レベルの問題を(大問(1)(1)同様「チェック&リピート」で)幅広くこなせばよいとして、後者はどうしても後回しになりやすい。年度によって、ベクトル、座標、複素数平面など使わせる「道具」も異なるほか、問われている内容も全体的に高度であるので、そういった問題に慣れるためにも、国公立大の理系学部の入試問題レベルの演習書で、図形問題を多く扱ったもの(具体的には「教科書だけでは足りない 理系受験生のための図形問題」(河合出版))に取り組んでおきたい。もちろん、「やさしい理系数学」(河合出版)のように内容も濃くそれなりに分量もある本を使うなら、そこに本学と同レベルの図形問題も収録されているだろうから、それで事足りると感じたら、やたらと本を増やす必要はない。
数学が得意な人は7割、年度によるが易しい問題が多ければ8割は欲しい。思考力・記述力を要する大問も、できる限り完答したい。どの分野から出題されてもいいように、特に図形問題を中心に苦手分野対策を万全にしよう。
数学が苦手な人も、5割を切ってしまうと他教科でカバーできない恐れが出てくる。大問1だけは完答して、他の大問からも部分点を稼ぎたい。苦手分野であっても、大問1題をまるまる捨てるのは得策ではないので、最後まで集中力を切らさないようにしよう。