しっかりした学力のうえに『本番力』が求められる

国公立大医学部(医学科)といえば、国内では文句なし最難関ですね。よく「大学はどこであれ、国公立の医学部であれば、東大の理科Ⅰ類を目指すつもりで勉強せよ」と言われますが、ひとつの目安にはなるかと思います。ただ、東大だけを目指すわけではないので、東大だけに絞った2次試験対策をすればよいというわけではありません。ミスの許されない標準的な問題から、個々の大学独特の難問まで、どの分野からどのように出題されても慌てず対処できるよう、周到に準備をしておく必要があります。

また、受験生によってはセンター試験の結果次第で受験校を変えることもあるでしょう。その短期間で気持ちを切り替え、目標に向かって進んでいけるかどうか。そして2次試験本番で力を発揮できるかどうか。皆さんの先輩たちも、そのような修羅場をくぐり抜けて大学へと進学し、医師になったのです。(だからこそ、一刻を争うような状況においても、落ち着いてその場その場で必要とされる処置を決め、実行できるのだと、筆者は勝手に思っています)

まずはどうあれセンター試験

さて、国公立大医学部を志望した時点で、センター試験は避けて通れないものになるわけですが、最難関の学部ということで、目標点が非常に高くなることは、皆さんもきっとご存知でしょう。センター試験自体も毎年少しずつ変わって来ていますが、前述の東大理科Ⅰ類の目安で言えば、目標点は9割(以上)です。特に、数学ではミスは許されません。数学は①・②(前者が数学Ⅰ・A、後者が数学Ⅱ・B)の試験が例年連続した時間帯で60分ずつ行われますが、できれば片方は満点、他方も大問の最後の方だけ、1個か2個ぐらいのミスにとどめたいところです。よく、新聞や受験サイトを見ると「今年は難しくなった」「易しくなった」と書かれていますが、その多くは平均点の上がり下がりを踏まえてのものなので、医学部を含めた難関大の志望者には必ずしも有用でないことに注意しましょう。

ズバリ皆さんにとって、センター試験の難しい・易しいは「満点の取りやすさ」です。

例えば、序盤の大問に計算量が多かったり、思考力が求められたりする問題があると、そこで差がつきます。最近では「データの分析」で文章の長い読解問題も見かけるようになりましたが、こういったものに苦手意識を残してはなりません。ある年のセンター試験では、関数分野で「動点」を扱った問題が出て、面食らってしまった受験生も多かったと聞きますが、皆さんのライバルとなる受験生は、恐らく中学生や小学生の頃から塾などに通い、鍛えられてくるはずですから、動く図形を扱った問題もきっとお手の物のはず。しっかり学習してくる受験生と「自称・医学部志望者」をふるい分ける問題としては、たいそう「機能」したのではないかと、筆者は勝手に思っています。その他では、少し前の話になりますが、主に数学②で到底60分では解ききれない分量の問題が出題されていた時期もありました。先ほどは機能などと述べましたが、皆さんはセンター試験を作成して下さる大学の先生方の気持ちになり、問題のどこでどれぐらい差をつけようとしているか、感じ取れるぐらいになりたいものです。

さて、1つ救いとなるのは、センター試験は大問ごとにどの分野から出題されるか、毎年ほぼ決まっており、分野間の融合パターンも非常に限られることです。

(注記)例えば、数学①の前半の大問では、数学Ⅰ(+中学までの学習内容)の知識だけで解ける問題しか出題されません。これは、高校では数学Aの3分野(場合の数と確率、整数の性質、図形の性質)のうち2分野を選択して学習すればよいことになっているからです。例えば、現行課程下のセンター試験では、図形と計量(三角比)の大問を出題する際に、角の二等分線の性質や円に内接する四角形の性質(いずれも数学A「図形の性質」分野の知識)などを使わせてはいけなくなっていますが、古い過去問では両方の知識を用いないと解けないものも見られます。

そこで、教科書で1つの分野の学習を終えるごとに、その分野のセンター試験の問題にチャレンジしてみて欲しいと思います。その段階で、時間さえかければ満点が取れる(少なくとも解答・解説を見れば次は同じやり方で解ける)状態に、まずはもっていけるようにして下さい。そして、マーク模試などでも毎回満点を目標とし、

「満点ぐせ」をつける

よう、心がけましょう。センター試験本番では「いよいよセンター試験の数学だ。ここでミスしたら取り返しがつかなくなる…」と思い悩まず、「満点以外、取るわけがない。もし自分が満点を取れなければ、誰も満点が取れないはずだ」と思えるようになっていることが理想です。

2次記述は7割を目安に

国公立大の2次試験は記述式です。数学Ⅲまでが出題範囲に入りますから計算力などはセンター試験同様必要になりますが、それに加え、読める答案が書けるかどうかで差がつくでしょう。出題される大問数は大学によって異なりますが、5題程度が一般的です。医学部を除く理系学部と共通の問題が出題される大学と、医学部専用の問題が出題される大学がありますが、前者の場合は満点とかいかないまでもかなりの高得点(大学にもよるが8割程度?)が求められます。後者の場合(医学部以外の理系学部がない大学も含めて)は、難易度が高く取り組みづらい大問が含まれることが多く感じますが、それ以外の問題(のことをよく「標準問題」と呼びますが…)をほぼ完璧にしたうえで、難問とされる問題からも部分点を集めたいところです(7割程度?)。

(注記)ところで、よく「標準問題」と言いますが、これは教科書+αレベルという意味ではなく、同程度のレベルの大学の入試問題における標準をさすことが多いです。教科書学習を終えたばかりでは、まるで手がつかない人がほとんどですから、心配しすぎないでください。それがおぼつかないと(6割台~5割台となってしまうと)、他教科でカバーするのはだんだん難しくなってきます。

よく言われることですが、苦手分野は絶対に作らないようにして下さい。他の理系学部の志望者であれば、6割程度取れれば大体合格圏内に入れるので、試験本番では、苦手分野の問題は後回しにし、極端なことを言えば5大問中2題ぐらい白紙で出しても、残り3大問をしっかり取れば、数学で足を引っ張ることはなくなります(言ってみれば、得意分野に偏った「行き当たりばったり」「自己流」の対策でも何とかなります)。そういった「ごまかし」が効かないのが、国公立大医学部の数学だと思って下さい。そこで求められるのは、与えられた課題を選り好みせず淡々とこなしていく意志の強さです。努力していくうちに、学んだ内容を高いレベルで理解し、頭の中で整理できるようになります。