この章からは代謝という化学要素満載の内容を学んでいきます。生物の体の中では物質を合成したり分解したりと様々な反応が行われています。このようなあらゆる反応を全部含めて代謝と呼びます。 なかでもエネルギーの出し入れを伴う代謝エネルギー代謝と呼び、これには同化異化の2種類があります。同化とは、外から取り入れた簡単な物質にエネルギーを加えることで複雑な物質を合成することを言います。 異化とはその逆で、合成した複雑な物質を簡単な物質に分解することでエネルギーを取り出すことを言います。これをヒトの例で考えてみます。私たち日本人はお米を食べますが、お米のなかにはデンプンが含まれています。 このデンプンは消化されてグルコースとして吸収されます。こうして体内に吸収された簡単な物質グルコースをグリコーゲンという複雑な物質に変えて貯蔵します。このときにエネルギーが吸収され、この過程を同化と呼びます。 食べてばっかりではいけないと運動をする際にはエネルギーが必要です。蓄えられたグリコーゲンがグルコースに作り変えられ、さらにグルコースが二酸化炭素や水に変化し、この過程でエネルギーが取り出されます。これが異化です。 ここまで例を用いて説明してきましたが、以下に簡潔にまとめました。

同化:小さな物質から大きな物質を作る。エネルギーを吸収。
異化:大きな物質から小さな物質を作る。エネルギーを放出。

さて、同化と異化の話と切っても切り離せないのがATPという物質です。ここまで何度か登場していますからここできちんと説明しておこうと思います。 ATPはadenosine triphosphateの略で、日本語ではアデノシン三リン酸と訳されます。名前の通りアデノシンという物質にリン酸が3つついています。 アデノシンはアデニンという物質にリボースという糖がくっついたものを言います。 つまり、ATPはアデニン+リボース+リン酸×3という構造をしています。このリン酸3つの間の結合を高エネルギーリン酸結合といい、ここに大量のエネルギーが取り込まれます。 注意して頂きたいのは3つのリン酸の間の結合なので、結合の数は2つになることです。

図:ADPとATPの関係

この結合に蓄えられたエネルギーを使う際には、リン酸を1つ切り離します。 こうすることで高エネルギーリン酸結合が切れ、そこに蓄えられていたエネルギーが放出されます。ATPのリン酸が1つ切り離された状態の物質をADP、アデノシン二リン酸と呼びます。残っているリン酸が2つだからです。 ATPの高エネルギーリン酸結合を切ってエネルギーを放出してADP、ADPにリン酸を高エネルギーリン酸結合させエネルギーを蓄えてATPといった具合に、ATPとADPを切り替えることでエネルギーの出し入れを可能にしています。