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合格体験記 東京大学文科一類 H.A君①

 高校一年の春、私は最初の三者面談で、「文系なら東大へ行け」という宣告を受けました。地元の進学校である久留米大学附設高校に入学した歓喜冷めやらぬ時期のことだったので、今後のことなど微塵も考えていなかった私と両親は唖然としてしまったのを覚えています。東大とはもちろん仙台に鎮座する彼の国立大学の略称でも、箱根駅伝でよく名前を聞く私立大学の略称でもなく、本郷に聳え立つ赤門で広く知られる東京大学のことを指します。早々に受験を切り上げるためなんとなく選んだ高校での学校生活を始めたばかりの浮かれた十五歳に、当時の担任はまるで直近の定期テストの目標点数について喋るかのような口調で、お前は日本の文系最高峰を目指せと告げたのです。

 福岡市内の全校生徒が百名に満たない小さな公立小学校を卒業した後、地元の中学校の治安の悪さを考慮した母は、私に国立中学校へバスで通うことを勧めました。正直に言ってその時期中学校で学んだことと言えば、規律に反すれば教師陣から理不尽な八つ当たりが飛んでくるということと、いかにして当時所属していたソフトテニス部の活動をサボるかということくらいです。県下の国公立中学校ではトップレベルの学校だったにも関わらず、三者面談や学年集会で学業成績に極端な苦言を呈する教員も居らず、テスト期間だからと言って放課後教室に居座る級友も居ませんでした。ただし、彼らが専ら受験戦争時の闘争本能を忘れ、牙を抜かれた学生であったと言いたいわけではありません。生徒は殆どが大なり小なり何らかの学習塾に通っており、中学校はそのことを承知した上でのある種の休憩所のような場所になっていたのです。例にもれず私もまた、地元で一大勢力を築いていた英進館という学習塾に通っていました。

 私は自分の受験というものに対する姿勢は、小学校から中学にかけて通ったこの塾において培われたと考えています。前述の通りそもそも競争相手の少ない小学校や、成績評価を意識することのなかった中学校と、義務教育制度の下では触れることの無かった一切の競争の場をこの学習塾が与えてくれました。高校入学を待たず辞めてしまいましたが、大手塾の生徒であった利点は大きいと考えています。第一に生徒数が多いです。九州全土に展開しており、多様な模試を受ける機会を与えてくれ、合宿所では順位表でしか見ることの無かったライバルたちと対面することで狭き門を競っているという実感が湧きました。また、これは家庭学習の時間を一切設けなかった自分の学習スタイルへの不安から来る意見かもしれませんが、勉学にしろ他分野のことにしろ、上達に関して主流となる波に乗ることはある程度の安心感を与えてくれます。このやり方であっているのだろうかと疑うことなく、ひたすらに知識の蓄積と応用に時間を割くことができます。気兼ねなく一点に集中できる環境は貴重です。自分のスタイルに自信が持てない人は、こうした学習マニュアル的なものに一切を委ねるというのも一つの手かもしれません。大手塾の長所として、第二に学校の成績向上を目的としがちな小規模の塾に比べて、難関突破を目指して入塾してくる生徒の割合が多いことが挙げられます。必然的に成績が上位になるほど残りの席を意識し、他より一歩でも先を行こうとするようになります。当然ストレスの溜まる生活でしたが、この程度の緊張感、切迫感は逆に学習の面で一定の集中力を生み出してくれます。「精神に負荷をかける」という姿勢が、以後机に向かう際に最も効率的な進捗を生むための基盤となったのは間違いないと思っています。

 高校受験が終わると、勉強における安堵と緊張を与えてくれる存在は塾から学校へとシフトしました。進学校と銘打つだけあって生徒個々人のデータ管理や分析、学習フォローアップまで行う体制が整っていたため、私はそれまでの‘既存の道筋に従えばよい’という勉強姿勢を変えるつもりはありませんでした。しかし周囲も同様に考えるのは当然の流れであり、更に小中学校で英進館に通うという同じような経路を辿ってきた同級生が多かったので、最初の一年間は特に目立った成績を上げることもなかったように思います。記録を確認してみると、この時期は学年の五十番前後をうろうろしていました。振り返って当時の自分を褒めたい点と注意喚起したい点が一つずつあって、前者は伸び悩む期間にも関わらず、けして自分の位置を卑下し過ぎなかったことです。単に鈍かっただけかもしれませんが、成績の二極化が加速度的に進行しやすい進学校においては重要な意識だと思います。後者は、鈍感であるが故に、客観的に自分の立ち位置を認識して学習法の変革を思いつきもしなかったことです。安心感と一時の切迫感を基として言われたことをやればいい、という精神論では限界が見え始めていました。その二つを踏まえたうえで合理的に、先手を打って、自分の学習スタイルを見直す岐路に立たされていました。

 

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