昭和大学 一般入試 物理
昭和大学の理科は二科目合わせて2012年度は140分。2011年度以前は150分である。単純計算で一科目あたり70分ないし75分の計算である。
問題形式について
まず大問について。
大問数は、2010年度までは4問で、2011年度に一回5問となったら2012年度にまた4問に戻った。その代わりに2012年度には理科の時間が150分から140分になった。2011年度からふらふらと迷走しているように感じる。
次に小問について。
小問の形式は、記述式、文章の穴埋め式がほとんどだが、どの年度にも一部論述を書かせたり、図を書かせたりする問題が見られた。
以下に各大問あたりの小問数の表を示す。
年度 | 2012 | 2011 | 2010 | 2009 | 2008 | |
---|---|---|---|---|---|---|
小問数 | 第1問 | 7 | 5 | 6 | 7 | 6 |
第2問 | 7 | 3 | 4 | 5 | 5 | |
第3問 | 5 | 10 | 6 | 6 | 2 | |
第4問 | 5 | 7 | 5 | 2 | 8 | |
第5問 | 18 | |||||
合計 | 24 | 43 | 21 | 20 | 21 | |
平均 | 6 | 8.6 | 5.3 | 5 | 5.3 |
上の表の、小問数が8問より多いものは文章の穴埋め式だった。記述式の問題が最も多く、その小問数は5~7問の物が最も多かった。2012年度に理科の時間が140分に変更になったのでおそらく2013年度もそうなると予想されるのでそうだとして話を進めると、物理にかけられる時間は70分なので大問1問あたり17~18分という計算となる。なので、記述式の場合小問一つを大体2分半~3分程で仕上げる計算げよいだろう。これ以上かかるようならさっさと見切りをつけて次の問題に向かうべきだろう。
論述形式もしくは図が含まれる場合、その大問の小問数は少ない場合が多いのでそうなら時間は十分かけられるが、一部2008年度第1問のようにそこそこ小問数のある大問に紛れ込んでいる場合があるのでその時はぱっと見て解答の方針がつかなければさっさと飛ばした方がよいと思う。
出題範囲について
以下に、年度・問題別の出題範囲の表を示す。
第1問 | 第2問 | 第3問 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
2012年度 | 力学 |
物体の運動 | 熱力学 | 状態方程式 | 電磁気 | コンデンサー |
2011年度 | 力学 | 浮力 | 熱力学 | 気体 | 波動 | ドップラー効果 |
2010年度 | 力学 | 円運動 | 熱力学 | ニュートンの冷却の法則 | 電磁気 | 電荷 |
2009年度 | 力学 | 万有引力 | 波動 | 音波 ドップラー効果 |
電磁気 | 電流と磁場 |
2008年度 | 力学 | 円運動 | 熱力学 | 熱機関 | 電磁気 | コンデンサー |
第4問 | 第5問 | |||
---|---|---|---|---|
2012年度 | 電磁気 | ベータトロン | ||
2011年度 | 波動 | 回折格子 | 電磁気 | コンデンサー コイル |
2010年度 | 波動 | レンズ | ||
2009年度 | 波動 | レンズ | ||
2008年度 | 波動 | 光の屈折 |
上の表を見ると、これはどの大学でも普通の事なのだが、どの年度も力学と電磁気は出題されている。それ以外の範囲には波動と熱力学(と原子物理)があるが、この大学ではこの5年で波動の問題が6問、熱力学の問題が4問出題されているので、比較的波動の方が好きなのかな、と感じた。特に2011年度と2009年度は、力学と電磁気が1問ずつなのにも関わらず波動の問題が2問出題されている。普通は力学か電磁気を2問出すだろう。残りはバランスのよい構成となっている。
問題について
まず、全体を通した雑感について。
まず出題形式についてだが、記述式の物、穴埋め式の物、論述形式のもの、さらには図を書かせたりと非常に幅広いなと感じた。論述や図の問題が毎年出題されていて、きちんとした理解が求められているのだろうなと思う。
内容については、光ファイバーや顕微鏡など、身近な物を題材として取り上げる事が多いと感じた。しかしかといって内容のレベルが高いかと言われたら、そうでもなかった。
簡単な問題は本当に簡単で、この大学に合格するようなレベルの人だと差がつかなさそうなものが各年度半分以上を占めていると思う。つまりここで落としていては厳しいという事である。難しい問題を解く能力も必要だが、それ以上に基本の問題をしっかりと、ただ公式を覚えるのではなく理解できているかどうかが重要だと思う。
次に、各年度について書いていこうと思う。
2012年度
全体
全体的な難易度は例年通り。第1問と第3問の難易度が低いので、ここはしっかり取って余った時間を第2問や第4問にまわそう。第4問はベータトロンにしては少し簡単というだけで他の3問と比べればやはり難しいので、ここの完答は狙えたらでよいと思う。第1問、第3問さえしっかり取れていれば十分合格点には達するだろう。
第1問 力学 物体の運動
難易度はやや低め。物体のある運動について考察する問題。斜方投射された物体がある高さで斜面の上に則、その後別の物体の上を滑るというもの。2物体が接触した後、同じ速度になりその速度を求めるというのが最後にあるが、これは2物体の重心の水平方向の運動量が保存すると考えて運動量保存則からアプローチしてもよい。
第2問 熱力学 状態方程式
難易度は普通。前半は水銀柱について、後半は未知の物体の密度について考察する問題。水銀柱の高さは、水銀柱に働く力を考えれば解く事ができるだろう。ちなみにこれによく水銀が用いられるのが、水銀の蒸気圧が極めて低いため(実際は水銀柱の上の空間は厳密な真空とはならなく、気体状態の水銀が存在する)である。前半によって、液体の密度によって柱の高さが決まる事がわかった。そこで、これを利用して未知の液体の密度を求めようというのが、後半である。
第3問 電磁気 コンデンサー
難易度はやや低め。コンデンサーを含む回路について考察する問題。回路には直列、並列に繋がれたコンデンサーが5つあるだけなので、どんどん合成容量を求めてそれぞれのコンデンサーの極板間電圧、また蓄えられた電荷を求めよう。これは全て取ろう。
第4問 電磁気 ベータトロン
難易度はやや高め。ベータトロンについて考察する問題。電子加速器によく知られたものとしてサイクロトロンとベータトロンがあり、サイクロトロンの方はよく取り上げられるがベータトロンはあまり取り上げられない。おそらく、微積にどうしても触れかけてしまうために難易度が高くなる傾向にあるからではないかと思う。しかしこの問題は考察が比較的浅く、初見でも計算で十分出せる範囲なので落ち着いて取り組もう。
2011年度
全体
全体的な難易度は例年よりもやや高い。まず2008~2012年度の中で唯一大問数が5問で、1問にかけられる時間が短いという事。第2問が簡単で、おそらく早い人なら5分弱で解いてしまうだろうが、それでも残りを1つ15分強で片付けるのはなかなか厳しいと思う。なので多くの人が解ききれずどこかを捨てる事になってしまうと思うが、自分は捨てるなら第4問の(7)(論述形式の上に配点が低そう)か、それでも足りなければその次のBだろうか。というのも、沢山書いた所でそれが合っていなければ0点だからである。それなら穴一つでも埋めて少しでも点を稼いだ方がいい。
第1問 力学 浮力
難易度はやや高め。浮力について考察する問題。(1)は、水に浮かべた氷が溶けると液面はどうなるかという問題だが、これは中には答えを知っていたという人もいるだろう。どちらにせよ文字を使って示さなければならないので、知らなければ計算してみればよい。後半は少し難しい。まず動かすのが物体ではなく容器であるという事、そして、容器をxだけ下げた場合、水面の動く距離はxではないという事である。これは、物体をxだけ持ち上げ、その後物体と容器を一緒にx下げると考えればわかるだろう。そこの部分で計算ミスをしないように注意しよう。
第2問 熱力学 気体
難易度はやや低め。ピストンで仕切られた2つの部屋の気体について考察する問題。小問が3つしか無く、また一つ一つもさほど難しくはないので、状態方程式をさっさと立てれば時間を余らせて解ききる事ができるだろう。
第3問 波動 ドップラー効果
難易度は普通。ドップラー効果の応用例について考察する問題。文章の穴埋め式となっている。応用例の考察といっても、内容はよくある、音源も観測者も動く、壁も動く状態で発せられた音と壁からの反射音のうなりを観測、みたいなものである。穴埋めになっていて穴が多いので先でどんな事を聞かれるかを予測しながら文章を読もう。
第4問 波動 回折格子
難易度はやや高め。回折格子について考察する問題。内容はほとんど教科書通りだが、最後の方から波長の異なる光を入れるとどうなるか、またじゃあ白熱電球ならどうか、という考察から、最後はBのシャボン玉が色づく理由について述べよという論述形式の問題となっている。きちんと段階を踏んでいるので答えやすくはなっているが、それでもBを答えるのはなかなか難しいと思う。光が干渉しているのはわかるだろうが、その光が油膜の外側と内側で反射した2つという所まで到れるかどうかという所。
第5問 電磁気 コンデンサー コイル
難易度はやや高め。前半はコンデンサーをミクロな視点から考察し、後半はソレノイドコイルについて考察する問題。内容的にはコンデンサーは基礎でソレノイドコイルはそれより少し難しいくらいだが、如何せん分量が多い。第4問の論述を後回しにしてこちらを先にやっていって、ある所で諦めて残りは捨てる、というのがよいだろう。
2010年度
全体
全体的な難易度は例年通り。第2問が題材的にも非常に珍しく取り組みにくいので、第1問、第3問、第4問でしっかり取ろう。あと心配すべき所は、論述形式の問題があったり、第4問は計算過程をきちんと示さなければいかなかったりする点で、時間が75分と長いとはいえ時間配分には十分注意しなければならないだろう。
第1問 力学 円運動
難易度は普通。円運動について考察する問題。まず最初に円運動している物体の加速度が円の中心を向いている事を示せ、とあるが、加速度が速度の変化率である事を利用してアプローチしていけばいいだろう。これがわかるかどうかは後ろの問題には差し支えないので、見てわからなければさっと飛ばそう。(2)は、縦向きの円運動を考えるとわかりやすい。後半はあまり思考が深くないので解こう。
第2問 熱力学 ニュートンの冷却の法則
難易度はやや高い。ニュートンの冷却の法則について考察する問題。そもそもこの法則をおそらく知らないと思う(ちなみに自分は大学のレポートでこれを取り扱った事があるので知っていた)。この法則は、物体の微小時間の温度変化はその物体と周囲の空気の温度差に比例する、というものである。外気の場合空気の温度は一定をみなして微分方程式を解く事になるが、それを解くと物体の温度は底がeの指数関数になる。それが問題文に書いてある式である。見た事が無い人がほとんどだろうと思うので、問題の内容はその場で考えて溶けるものばかりである。見た事が無い問題だけに少し取り組みにくいと思うし、受験会場で実際こういった問題に当たると焦ると思うので難易度はやや高めに設定した。
第3問 電磁気 電荷
難易度は普通。両端で電位差のある導体内の電荷の動きから導体の電気抵抗を求めようという問題。小問数が比較的多く、その分誘導がしっかりしているのでそれに上手く乗っかっていこう。
第4問 波動 レンズ
難易度は普通。顕微鏡の構造について考察する問題。顕微鏡には対物レンズと接眼レンズの2つがあるので、この2つについて考察する事になる。実際考えるのは問4までで、あとはほとんど数値を代入するだけである。対物レンズでできた実像を接眼レンズが虫眼鏡のように拡大して物を見るという構造になっているので、対物レンズで実像を作る段階で像が上下左右逆になる事がわかる。
2009年度
全体
全体的な難易度はやや低め。この大学はあまり見ない物を題材にするケースが多いが、この年度はそれも無くどれもメジャーで扱いやすいものばかりである。少し物理ができる人なら満点近くが十分狙える問題だと思う。
第1問 力学 万有引力
難易度はやや低い。太陽の周囲を回る惑星について考察する問題。文章の穴埋め式となっているので、流れに乗っていけば良い。内容の難易度もそれほど高くないので、ここはしっかり取ろう。
第2問 波動 音波 ドップラー効果
難易度は普通。前半は2つの音源が出す音の干渉について考察する問題で、後半はどの音源を動かすドップラー効果の問題。後半は、ドップラー効果でうなりが消えた、という条件を使って式を立てれば簡単に音源の速度が出せる。
第3問 電磁気 電流と磁場
難易度はやや低め。磁場中の回路の導体棒の運動について考察する問題。図中に滑車やら重りやらがあるが、結局導体棒にmgという一定の力が働いているだけである。あとは、導体棒が加速するにつれ電磁誘導により誘導起電力が生じ、電流がながれ・・・とよくある展開になっていく。
第4問 波動 レンズ
難易度はやや低い。凸レンズと凹レンズについて考察する問題。作図と計算過程、倍率などを書かなければならないが、何のひねりも無い凸レンズ一つと凹レンズ一つについて考察するだけである。これの図が書けないとかましてわからないというのは避けたい所。
2008年度
全体
全体的な難易度は例年通り。第1問がかなり難しいが、他の3つの難易度が低いので合格最低点はそう動かないだろう。第1問はおそらくほとんど手が出ないと思うので早い段階で後回しにして第2問、第3問、第4問をしっかり取ろう。その3問で7割以上取れるはずなので、十分合格点には達するだろう。
第1問 力学 円運動
難易度は高い。ひもで円運動している物体のひもの長さが変化する問題。(2)で面積速度一定もしくは角運動量保存則の考えに到れるかが分かれ目。その先も積分が出てきたりと、物理が苦手な人ならおそらくほとんど手がつけられないであろう問題。しかし例えば(2)がわからなかろうがその先はできたりするので、諦めず全ての問題にチャレンジしよう。
第2問 熱力学 熱機関
難易度は普通。ある熱機関について考察する問題。最後はおなじみの熱効率だったりと内容はおくある問題だが、一つ注意が必要なのが(4)。気体の状態方程式を考えると、A→BとB→Cの変化では温度は直線的に変化するが、A→Cはちょっと考えなければならない。AとCの時の温度は同じだが、その間では同じではない。P-Vグラフでは等温線は双曲線のグラフなので、AとCを通る双曲線が等温線になる。なのでAとCの間の温度はAとCのものとは異なることがわかる。変化するとわかる。軸と離れた双曲線の方が温度が高い等温線なので、AとCの間の各点を通る双曲線を考えれば、AとCの間はAとCより温度が高く、また中点が最も高いとわかる。
第3問 電磁気 コンデンサー
難易度はやや低め。コンデンサーを含む回路について考察する問題。図を書かなければいけないが、書く図は非常に簡単な物なので警戒しなくてもよい。(2)のような問題では、
① コンデンサーの基本式 Q=CV
② キルヒホッフの法則
③ 電荷保存則
の3つの式を使えば必ず解けるので、この3つの式は必ず立てよう。
第4問 光の屈折
難易度は普通。前半は水中から発せられた光について考察する問題。後半は前半の考察を深めて光ファイバーについて考える問題。前半も後半も文章の穴埋め式となっている。内容自体は屈折の法則と、全反射のみでそれほど難しくはない。分量もさほど多くないので、これは全て取ろう。