近畿大学 推薦入試 生物
過去5年間の分析
範囲別出題回数
一つの大問の中に二つの異なる事柄が出題されていた場合、それぞれを一回としてカウントした。
タンパク質の性質、働き | 1 |
---|---|
植物の発生、成長 | 2 |
遺伝、遺伝子 | 3 |
恒常性 | 2 |
代謝 | 2 |
植物の内部反応系 | 2 |
神経、神経情報伝達 | 2 |
環境と生物の反応 | 3 |
腎臓の働き | 1 |
免疫 | 1 |
細胞小器官 | 2 |
出題範囲の傾向
毎年出題される決まった範囲はないが、一つ言えるのは遺伝、遺伝子の範囲、環境と生物の反応の範囲が過去5年のうち3回出題されていて、比較的頻出の範囲と言える。
広い範囲から万遍なく出題される傾向の中で、近畿大に顕著なことは、問題出題形式の定型化である。過去問を繰り返し解くことでこの問題形式に慣れることで、高得点が狙えるだろう。では次の項で問題形式を見ていこう。
問題形式
大問の数としては毎年4題で固定である。大門ごとの問題形式は次の表のようになる
知・・・知識問題 実図・・・実験問題、図表読取問題
年度/大問 | 1 | 2 | 3 | 4 |
---|---|---|---|---|
2011 | 知 | 知 | 実図 | 知 |
2010 | 知 | 知 | 実図 | 実図 |
2009 | 知 | 実図 | 知 | 実図 |
2008 | 知 | 知 | 実図 | 実図 |
2007 | 知 | 実図 | 知 | 知 |
毎年大問1は必ず知識問題で、実験、図表読取問題は1問以上出題され、大問3,4になることが多い。さらに、実験や図表は典型的なものばかりである。
小問の数は5年間で104問、大問1題平均5,2問で、受験問題としては標準からやや多めであろう。小問数で大問を分けると次の表のようになる。
小問数 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 |
---|---|---|---|---|---|---|
大問数 | 3 | 3 | 7 | 3 | 2 | 2 |
小問数はいずれの大問も3~8問で5問が最も多く、4~6問で半分以上を占める。
2008年度の大問1以外のどの大問にも共通なのは問1(大問によってはたまに問2)が穴埋め問題になっていることである。穴埋め問題の穴の数は次の表のようになる。
年度/大問 | 1 | 2 | 3 | 4 |
---|---|---|---|---|
2011 | 5 | 13 | 5 | 13 |
2010 | 4 | 10 | 10 | 5 |
2009 | 9 | 12 | 10 | 7 |
2008 | 0 | 10 | 8 | 8 |
2007 | 4 | 5 | 15 | 6 |
5年間で計169問の穴埋め問題が出題され、1年平均約34問と非常に多い。また、どの問題も基礎的な知識を答えさせるものが多いので、しっかりと得点していきたい。
記述問題(ここでいう記述問題とは文で答えさせる問題のことである)の数は、2011年からさかのぼると3,6,2,5,4問である。小問数の年平均は約21であるため、記述問題の占める量は少ない。さらに、記述問題はほぼすべて文字数指定式であり、50字以下以内の記述問題が計20問中17問で、残りの3問はそれぞれ55,75、100字以内の指定がついていて、分量としては総じて少ない。また、記述問題の内容としては、標準的な問題集を解いていれば必ず解くことになる典型的な問題が多く、典型的な問題でないにしても、問題文中にほぼ答えとなるような記述がなされており、記述問題とはいっても、問題文意さえ誤らなければ確実に得点できる問題ばかりだ。
各年度の雑感
2011年度
大問1はタンパク質の性質、働きに関する問題。
例によって問1は穴埋め問題でどれも基本的な問題である。
問2は生物Ⅰ,Ⅱを一通り学習していれば必ず出てくる代表的なタンパク質の働きに関する記号問題であり易しい。
問3は構造式を答えさせる問題で、近々大学の推薦入試としては珍しいが簡単。
大問2は植物の発生に関する問題。
例によって問1、問2は穴埋め問題でそれも基本的な問題である。
問3~問7は知識を理解して覚えられていれば難なく満点が狙える。
大問3はDNA,遺伝子に関する問題。例によって問1は穴埋め問題でどれも基本的な問題である。
問2~問5、問7は基本的な問題で、知識を答えさせる問題と生物学的な常識を問われる問題がある。
問6、問8は記述問題だが実験の意味を理解すれば必ず解ける。また、問8に関しては図表などを用いて知識を深めておけば容易に正答できる。
大問4は恒常性に関する問題である。問1の穴埋め問題に始まり、単語を答えさせる問題、実験結果を予想させる記号問題がある。実験結果を答えさせる記号問題は実験の主旨を理解できれば容易に正答できる。
2010年度
大問1は代謝に関する問題。
例によって問1は穴埋め問題で基本的な問題。
問2~問5は知識を放出するだけの易しい問題である。この大問は2分で完答しよう。
大問2は植物の固定系に関する問題。問1の穴埋め問題を含め、問1~問3は基本問題。
問4に関しては日頃から用語の意味合いを理解して覚えるようにしていれば簡単に答えられる。
大問3は神経伝達に関する問題。問1の穴埋め問題を含め問1~問4は知識を放出するだけの基本問題。
問5は記述問題だが、実験に関する記述をよく読み、実験の意味を理解すれば正答は容易だ。
大問4は外部環境要因に関する問題。
問1の穴埋め問題を含め、問3を除くほかの問題は基本問題である。
問3は実験の本質に関わってくる問で、しっかりと考えて答える必要がある。近畿大学の中では難しい問題。
2009年度
大問1は代謝に関する問題。問1の穴埋め問題を含め、問1~問4は知識を放出するだけの易しい問題。
問5は高校受験頻出の「腸の柔毛の存在理由」を想定すれば解答は容易い。
大問2は腎臓の働きに関する問題。問1の穴埋め問題を含め、問1~問4は基本問題。問4はグラフの読取が関係してくるが、よくある問題なので対応は容易。問5走らないと厳しいかもしれない難しい問題。
大問3は免疫に関する問題である。問1の穴埋め問題を含め、問1,2,4は基本問題である。問3は、分解酵素がリソソーム中に含まれている含まれていることを知らないと厳しい。(リソソームが細胞内消化を担っているという機能的なことをどの程度まで理解しているか)問5はやや難しい。「物質の運搬・分泌」と覚えているゴルジ体の働きをどの程度まで理解しているか問われる。
大問4は植物の成長に関する問題である。問1の穴埋め問題を含め、全ての問が基本問題である。問4で多少迷うかもしれないが、問題文中に全て書いてある。
2008年度
大問1は細胞小器官に関する問題である。細胞小器官について生物IからIIまで幅広い範囲で問われている。問5は生物の進化の範囲のところから問われているので広範に勉強しておこう。
大問2は恒常性に関する問題である。問1の穴埋め問題を含め、全ての問題が基本問題である。穴埋め問題と一問一答形式の問題しかないので確実に得点したい。
大問3は遺伝、生物の集団に関する問題である。問1の穴埋め問題を含め、問2の後半、問3など、非常に細かい知識まで問われる問題である。この大学の中では難しい問題である。
一方問4,5は記述問題であるものの、問題文中に大きなヒントが書いてあるので問題文をよく読みしっかり考えれば正答できる。
大問4は生物の反応、環境要因に関する問題である。問1、2の穴埋め問題を含め、全ての問題が基本問題である。問4のような顕微鏡がらみの計算問題はパターンが決まっているのでしっかりと学習し得点したいところである。問6は問題文をよく読めば容易に正答できる。
2007年度
大問1は細胞小器官に関する問題である。問1の穴埋め問題を含め、全ての問いが基本問題である。
問6は55字以内の記述問題であるが、ナトリウムポンプの働きの説明というよくある典型問題なので対応は容易である。確実に得点したい大問である。
大問2は遺伝情報の本体究明の実験に関する問題である。問1の穴埋め問題を含め、全ての問題が基本問題である。この実験はセンター試験でも頻出の実験であるので、よく演習を積んでおけばこの大問は2分以内に満点が狙える。
大問3は神経系に関する問題である。問1の穴埋め問題のコ、サのところが、問4まで見ないと明快に穴を埋めることができないという非常に嫌な問題である。こうした“意地悪”な出題形式は近畿大学には珍しい。
問1のほかの穴埋め問題と問2に関しては基本問題である。問3のような描図問題は近畿大学には珍しいが、決して難しくはないので落ち着いて正答したい。問4は近畿大学の中では難しい問題である。まず、問1の穴埋めが完璧にできていて、そのうえでしっかりと思考し論述できる総合力が試される。
大問4は植物の水系に関する問題である。問1の穴埋め問題を含め、問1~問3まで基本問題である。
問4は100字以内と近畿大学としては長めの記述問題である。植物ホルモンを学習するあたりで頻出の問題ではあるが、分量が多いため、暗記するのは厳しい。暗記に頼ることなく、しっかりと意味を理解して解答を導けるようにしたい。
全体を通して
近畿大学医学部推薦入試の最近5ヶ年の問題を解き、傾向と対策を練る中で最も印象に残ったのは、基本、標準問題が多く出題されることである。各大問の問1の穴埋め問題や、単語を答えさせる一問一答形式問題などの解きやすい問題が並んでいる。大学側の“基本、標準問題が間違いなく正確に解ける人材が欲しい”という受験問題出題方針が表れている。
ここで注意したいのは、「問題が簡単」=「合格しやすい」では決してないことだ。確かに、問題が解きやすければ自分は得点しやすい。しかしこれは周りの受験者も同様に得点しやすいということを意味している。皆が解ける基本問題を落としては受からない。他者が部分点狙いでくる記述問題を完答すれば合格に大きく近づく。こうした「基本問題は完璧に得点し、かつ記述問題で落とさない」ことがこの入試では求められている。
l 対策
どのような問題集がよいか
アクセス生物I、II
各章の初めに用語集がついていて、用語の暗記にも、一問一答形式問題にも使えるようになっている。また、同じく各章の初めに要点の整理のページがあるが、ここを図とともに押さえておけば知識としては、近畿大学対策は万全だろう。あとは発展問題を解く必要はないので、アクセスの標準問題を生物I,IIの全範囲を繰り返し繰り返し解こう。
これは、0からやっても1か月で終わるだろう。(もちろん他教科も並行して勉強しながら)したがって遅くとも受験の1か月前までに始めれば間に合うだろう。
スクエア最新図説生物
アクセスの図で、図を用いた問題のほぼすべてがカバーできるがワンパターンしか載っていない。もし余裕があれば図表などを用いて様々なパターンの表や図に慣れておこう。