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小論文対策講座 第10回

同じことの繰り返しは、「強調」であるというよりも「停滞」である

 突然ですが、「長い文章を書く」って、それだけでイヤなものに見えませんか?
 現代文の記述問題がそうですね。「五十字以内で説明せよ」でさえちょっと心を圧(お)してくるのに、「百字以内で」とか言われた際には、かなりの作業を要求する大問題みたいに見えてくる・・・。
 そこにきて、小論文。
 「400字以内で論じなさい」、
 「600字以内で論じなさい」、
 大学によっては「800字以内で論じなさい」。
 現代文のように難解な評論文を読まされることはほとんどありませんが、それでも小論文を難しく見せているのは、この「長い文章を書く」ということでしょう。
 ただ、今までの9回の授業の中で、そうした長大な文章を書く際の対策についてはお話してきましたし、このコラムを読んでくださっている皆さんには、「計画と準備さえしっかりしていれば、長い議論を書くことが不可能ではない」ということは分かっていただけていると思います。長くても、一定のめどを付けることはできるんです。

 ところで、今日は今までとはちょっと違った角度から、この「長さ」ということに関してお話しします。そのためにも、小論文から少し離れて、現代文における記述・論述問題に話を移してみます。

 現代文においては、「nA=A」という公式があります。左辺の「nA」は「n(任意の数)×A」ということ、右辺の「A」は「1×A」ということです。・・・数学的な厳密性を装ってカッコウを付けた言い方かもしれませんが、要は、「Aを1回書いても100回書いても、「A」としては1回としか認めません」ということです。もちろん、与えられる得点も、「1×A」でも「100×A」でも、同じように「A」ひとつ分です。
 そこで問題になるのは、「字数制限」です。
 例えば、ある問いに答えるために、「A」と「B」と「C」が必要だとします。そこで、何度も何度も「A」だけを繰り返し書くとどうなるか。もちろん、得点は「A」ひとつ分から動かないままに、字数だけはどんどん喰われていきます。やがて「A」の繰り返しは、「B」や「C」を書く余地を奪っていきます。なにしろ、「字数制限」がありますから。
 要するに、間違ったことや失点になることは書いていないが、同じことを繰り返しすぎて、加点になる要素がスッカスカな答案・・・そういう状態ですね。これを僕は、自分で勝手に「間接的減点」と読んでいますが、現代文の記述問題では非常によくある「失敗」のひとつです。

 さて、話を小論文に戻します。
 400字・・・600字・・・800字は、確かに長いです。長いと、当然ながら「埋めなければ!」という心理がまず働いてしまいます。字数が多いからこそ、現代文の記述問題よりもそうした心理は働きやすいかもしれません。
 一番手っ取り早い手は、「同じことの繰り返し」です。具体例を使い、言い換え、場合によっては同じ表現で「A」を繰り返す・・・。もちろん、マス目はどんどん埋まっていきます。コンテンツの密度は上がらないままに。
 結果としては、もちろんのこと、「中身スッカスカな議論」・・・悪く言えば、「議論」以前に「ひとつのメッセージのゴリゴリ一点押し」に仕上がります。これでは議論としては落第です。

 人によっては、自分の書いた小論の答案について、「君の答案は議論を掘り下げていない」というアドバイスを受けたことはありませんか? この、「掘り下げられている」「掘り下げられていない」ということについても、上に話してきたことと同じ枠組みで説明できると思います。要は、同じ事柄を繰り返しているだけで、議論が前に進んでいない。議論の密度が上がっていかないままに、言葉が続いていく・・・。それは、「議論を掘り下げていない答案」です。
 裏返せば、「議論を掘り下げる」ということは、ある事柄を述べたのに続いて、それを踏まえてそれに連なる別の事柄へと、語りの視点や話題がシフトしていくことを意味するわけです。その事柄について、問題点を指摘することはできないか?・・・その事柄には条件がないか?・・・その事柄について想定できる反論はないか?・・・その事柄を現代社会で実現するには何が必要か?・・・。こうした「進展」の繰り返しの中で、議論が掘り下げられ、議論の密度が上がり、答案の質が向上していく・・・。そういう答案は、よい答案です(もちろん、今までに何度も述べてきたような「一貫性」や「論理性」は必要ですよ?)

 というわけで、結論。

 同じことの繰り返しは、字数を稼いではくれるが、答案の質の向上につながる「議論の掘り下げ」にはならない。

 この一連のコラムも、残すところ5回になりましたが、最後までお付き合いのほど、よろしくお願いいたします。
 では、今日はこの辺で。

安達 雄大

安達 雄大

昭和53年生まれ。名古屋大学文学研究科博士課程出身。学生時代より大手予備校で指導を開始。現在は現代国語講師として全国で活躍する傍ら、医学系予備校で小論文指導も手掛ける。日々たゆまぬ研究に裏付けられた切れ味の鋭い現代国語の講義と丁寧な小論文指導により、受験生から絶大な信頼を集める。

 

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