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小論文対策講座 第9回

与えられたテーマについての知識は必要。しかし、その知識自体の説明には慎重に。

 このコラムも数えること 9 回となりました。最初は抽象的な理念の話しかできませんでしたが、徐々に皆さんが陥りそうな方法論の罠について、具体例も交えてお話できる段階に入りました。小論の答案作成に際してやるべきことややってはならないことが、皆さんの頭の中で形になってくれればよいのですが・・・。
 でも、まだまだ皆さんの答案を拝見していて目につく「やらかしちゃうポイント」はあります。あと数回はそうしたポイントについてのアドバイスに使い、それに続いて、小論を自分で勉強する際の留意点へと、話を移行させていきたいと思っています。
 引き続き、よろしくお願いします。

 さて、今日のテーマは、「背景知識」です。

「課題文で語られていることが、何についての話か分からない・・・。」

「○○についてのあなたの考えを述べなさい・・・とだけ言われても、その○○が何なのか分からない・・・。」

・・・そんな経験はありませんか?
 もちろんのことですが、そうした事態に陥ったのだとしたら、それは明らかに背景知識不足によるものです。課題文が読み解けなければ課題文を踏まえた議論はできませんが、その課題文に通底するテーマについて知らなければ、その課題文がそもそも読み解けません。つまり、知識がないがゆえに何も手が出せない状態ですね。
 課題文がある場合はまだ救いもあるかもしれません。課題文の情報から、何について語られているのかに検討をつけて論を立てていくこともできなくはありませんから。こうして考えると、知識不足が解答不能に直結するのは、課題文がない形式の問題に際してですね。なにしろ、テーマ語以外に一切情報がないわけですから。
 今言ってきたような事態は、是非とも防ぎたいものです。幸いにも、小論文でテーマになりうる語句や事柄について詳細に解説した参考書が、学部・系統別に数多く市販されています。新聞も知識習得の手立ての一つになると思います。事前に準備できることは、しっかりしておきましょう。

 ところで、背景知識が重要なのは当然のことだとして、背景知識は答案にどう反映させればよいのでしょうか? 持っている知識をどんどん書いていけばいいのでしょうか?
 知識があると、それをPRしたいですね。持っている知識は多ければ多いほどいいのは当たり前。問われている事柄について自分がどのくらいの知識を持っているかを示すんだ・・・知識の豊富さが小論文を見る側に悪印象を与えるはずがない。答案の説得力も増すはずだ・・・。そう考えて、答案いっぱいに「知識」を書くんですね。

 ・・・さて、「知識」は「君の考え」でしょうか・・・?

 先日、「先進医療についてのあなたの考えを 600 字以内で述べなさい」という課題を、ある生徒さんに提示しました。返ってきた答案は、見事に上の原理を遵守したもので、自分の知っているあらん限りの「先進医療」を挙げていくわけです。こんな医療も開発されている・・・あんな医療も開発されている・・・。そのまま 550 字を超えた辺りまで続いたところで、最終的には「こうした先進医療をどんどん開発していくことが望ましい」で締め括り・・・。
 「先進医療をどんどん開発していくことが望ましい」・・・。これが、答案から見出せるの唯一の「論点」です。当然ながら、採点のしようがありません。完全に、知識に振り回されたケースですね。
 もしこれが、「○○という先進技術が社会に与えうる影響」だとか、「△△という先進技術を人間に用いた際の問題点」だとかいった、先進医療技術の説明の先に何かを想定した具体例提示なのであれば、それはもう見事な論になる可能性もあるでしょう。でも、大抵の場合には、知識の説明こそがまずもっての課題であると取り違えたのでしょうか、それが肝心の「君の考え」につながっていかない・・・そういう生徒さんをよくみるんです。

 明言しておきます。「知識」そのものは「議論」ではありません。そして小論文は「議論」の文です。「知識」の説明しかない答案は採点できません。知識そのものは、別の教科で別の形で問われるものです。
 もっと言ってしまえば、その先に何も想定されていないような知識についての説明をクダクタと書き、そうした説明が肝心の「議論」を押しのけてしまうくくらいなら、いっそのこと、知識については何も説明せず、君の考えを書いた方がいいです。

 というわけで、結論。

 背景知識は絶対に必要だが、それ自体はあくまで補助。小論の良し悪しを決めるのは議論自体なのだから、知識はその手段としてのみ用いるべし。

 では、また次の回でお会いしましょう。

安達 雄大

安達 雄大

昭和53年生まれ。名古屋大学文学研究科博士課程出身。学生時代より大手予備校で指導を開始。現在は現代国語講師として全国で活躍する傍ら、医学系予備校で小論文指導も手掛ける。日々たゆまぬ研究に裏付けられた切れ味の鋭い現代国語の講義と丁寧な小論文指導により、受験生から絶大な信頼を集める。

 

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