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小論文対策講座 第7回

課題文の「要約」のコツ その1

 先回の記事では、課題文の適切な触れ方についてお話しました。結論をかいつまんで繰り返すと、あくまでも自分がこれからする議論の対象を明確にするための土台というような位置づけにとどまる課題文の要約は、手短に済ませるに越したことはない・・・ということです。
 では、そうした要約をどのように作ったらよいのでしょうか。その手順について、2点簡単にアドバイスしておきます。今回はその1点目についてお話します。

 第5回の記事で、実際に具体的な問題を用いて、答案の作り方についてひとつ例をお見せしました。そこで用いた題材を振り返ります。あの時の文章の要約は、次のようなものでした(第5回で示した答案から抜粋)。

生命というものは、生命反応を示す最小構成単位である細胞や臓器でもって捉えられるべきではない、生命はそうした部品同士が集まって形成している個体を単位として捉えられるべきである、これが筆者の主張である。・・・

 これを作成する時に私が一番気を付けたことは、「自分が書く要約を、いくつのパーツで構成するか」です。

 この課題文の字数は1300字近く・・・要約する際には100字程度が目安でしょうか。ところで、それほどの規模の文章を「1つ」として書くのは、おそらくかなり困難です。何よりもまず、「100字目」という終わりまでのプロセスが長すぎて、その全体を頭の中で一望できません。全体が見えないので、始まりが見えません。始まりが見えないということは、書き出せないということです。例えばですが、高校の現代文の定期テストで、解答欄を前にして鉛筆を持った手をプルプルさせながら、一歩も動けない時間を無為に過ごしてしまった経験はありませんか? 今言ったのは、それとかなり似通った状態ですね。
 では、どうしたらいいか? 私の感触について言えば、「100字の文章」を「1つ」書くのは御免こうむりたいところですが、「20~30字程度の文」を「4つ」書くということなら、まぁやる気になりますね。20~30字程度なら、終わりが見えますし、その全体も難なく見通せます。つまり、さっさと書き始められます。要は、100字全体に先立ってその構成要素をひとつひとつ書いていって、それからできあがった4つの文を1文に構成すればいいわけです。
 例えば、上の要約の例で言うと、私はまずはこんな感じで考えました。

        ↓

A(「生命=細胞・臓器」の否定)
1 生命というものは細胞や臓器でもって捉えられるべきではない
2 細胞や臓器は、生命反応を示す最小構成単位である
B(「生命=個体=細胞・臓器の集合体」の肯定)
1 生命というものは個体を単位として捉えられるべきである
2 個体とは、細胞や臓器といった部品の有機的集合体である    (← 計4パーツ)

 ここまで作れば、後は上の4つを、文法的にムリのない一文の日本語にするだけです。今回で言うと・・・

「 A2 → A1 → B2 → B1 」

 ・・・という順で書けば、キレイな日本語になるなと判断しました。その結果が、上の要約です。もちろん、構成要素の作り方は他にもあるでしょうし、構成要素の数についても「4つという数のみが正解」というわけでもないです。また、仮に上のようにパーツを想定したとしても、順番は上の通りでないと日本語として変だというわけではありません。構成要素の文内容、構成要素の数、その構成順には、ある程度自由があります。
 ともあれ大事なことは、上のような「部品」意識、「パーツ」意識なくしては、要約という作業は始まらないということです。

 というわけで、まとめ。

要約を作成する際には、その説明を構成する「部品」を意識すること。

 もちろんこれは課題文の要約のみならず、およそ小論文を書く際にいつでも必要な意識のひとつだとは思います。ただ、要約・・・すなわち課題文を整理して説明する際には、とりわけ効果的だと思います。
 課題文の扱いについては、もうひとつ留意してほしいところがあるのですが、それについては回をあらためて。

安達 雄大

安達 雄大

昭和53年生まれ。名古屋大学文学研究科博士課程出身。学生時代より大手予備校で指導を開始。現在は現代国語講師として全国で活躍する傍ら、医学系予備校で小論文指導も手掛ける。日々たゆまぬ研究に裏付けられた切れ味の鋭い現代国語の講義と丁寧な小論文指導により、受験生から絶大な信頼を集める。

 

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