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小論文対策講座 第6回

課題文をダラダラ「要約」しない。

今回に先立つ2回のお話で、答案作成の際のプロセスを、理論篇と実践篇とに分けて説明しました。先回の実践篇の方では、実際に答案を作ってもみました。せっかく答案を作ったわけですから、あの答案作りの過程から言える事柄を、更に幾つか話しておきたいと思います。

そのうちの一つが、「課題文をダラダラ要約しない」ということです。皆さんの答案を見ていてよく思うのは、「ああ・・・要約が長いなぁ・・・」ということ、それと同時に、「この子、残った字数の中でどうやって持論を書く気だろう・・・?」ということです。「字数を埋めたい!」という気持ちがあるのでしょうか、「他に書くことがない!」という焦りがあるのでしょうか。

しかも、そうして長々と要約が提示されている場合、大抵その要約は課題文自体を読めば分かるような、言わば課題文の繰り返しに過ぎない程度のものが多いですね。特に医学部系の入試で出てくる課題文の大半は、一読して分かる程度の易しい文章です。そういう場合には、端的に課題文のテーマなり筆者の論点なりを一言記せば済む程度なのに、課題文を書き写すかのように長々と要約が続く。ただの字数の無駄です。

なお、「小論文」というのは「解答者の意見・見解の提示」のことですから、課題文の要約そのものは「小論文」の「土台」・・・せいぜい「前準備」であって「小論文」そのものではない。場合によっては、そこは採点対象になっていない場合もある。そんなところに制限字数の大半を費やすから、「解答者の意見・見解」を書くための字数が残らない。字数が少ないということは、議論を掘り下げる余地がないということですから、当然「解答者の意見・見解」が浅くなります。ひどい場合には、答案の7~8割が課題文の要約で、それに続いて「うんうん、筆者の言うとおり!」で答案が締められている・・・。ここまでくると、それはもはや「小論文」ではありません。そこまででなくても、延々と要約が続き、それを補強する具体例(めいたもの)がひとつ挟まって、やはり最後に「うんうん、筆者の言うとおり!」で答案が締められている・・・。これも、「小論文ではない」とまで言いませんが、「小論文まがい」です。

気をつけたいのは、「課題文の要約」と「解答者の意見・見解」が混濁している場合でも、事態は同じだということです。いかにも持論っぽく議論が連ねられているけれど、よく読んでみるとそれは課題文を丁寧に説明しなおしただけのものであって、本来あるべき課題文を踏まえた持論はそれに溶け込んでしまっている・・・。こういう書き方は、結局解答者本人の見解が全く分からないという点で、「要約」部と「持論」部がハッキリ分かれてはいるが「要約」部が多すぎる・・・というケースよりも、場合によっては危険かもしれません。

というわけで、結論。

小論文とは解答者の意見・見解を問うものである。従って、それに先立つ課題文の要約はなるべく手短に済ませる。

以上のような意識がうまく働けば、持論を深く掘り下げられるだけの字数が稼げます。あとは、先回申し上げたような書き方に従って、全体の構成に見通しがついた状態を作ることができれば、答案としては「小論文」の名に見合うものが作れると思います。

以上、課題文の扱い方についてお話しました。答案作りの過程について言える事柄は他にもありますが、この先については回をあらためてお話ししたいと思います。

安達 雄大

安達 雄大

昭和53年生まれ。名古屋大学文学研究科博士課程出身。学生時代より大手予備校で指導を開始。現在は現代国語講師として全国で活躍する傍ら、医学系予備校で小論文指導も手掛ける。日々たゆまぬ研究に裏付けられた切れ味の鋭い現代国語の講義と丁寧な小論文指導により、受験生から絶大な信頼を集める。

 

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