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小論文対策講座 第3回

「本文全体の論理的一貫性」は小論文における大前提。

前回は、小論文における「正解」とは何かについて、やや具体的にお話をしてみました。そこから皆さんの課題として言えることを確認しておきますと、

小論文で検討の対象になるのは、主張の根拠づけや論証の仕方であり、それはあらかじめ課題の方で示されていないため、根拠づけ、論証の仕方は、自分で考えなければいけない。

・・・というものでした。

今回はそこから話を一歩前へ進めて、「本文全体の論理的一貫性」ということについてお話をしておきたいと思います。

もう一度確認しますが、「小論文では、自分の主張自体の内容はさることながら、それよりもその主張がなぜ妥当性を持つのかを説明することの方に重きを置くべし」・・・ということを今までお話ししてきました。この課題をイメージ化してみるなら・・・

主張A ・・・ 主張B ・・・ 主張C ・・・ 主張D

・・・という、ただ「考え」を羅列したような書き方ではなく、

主張A →→ 論拠A1 →→ 論拠A2 →→ 論拠A3

・・・だとか、

主張A →→ 補足A1 →→ 補足A2 →→ 補足A3

・・・だとかいったように、「論拠」や「補足説明」を「主張」に添えるという構成で議論を進めていくことが望ましいわけです。

ただし、答案が「たったひとつの主張」と「それに連なる論証(群)」のワンセットでオシマイ・・・ということになると、内容が浅くなります。「たったひとつの主張」と「それに連なる論証(群)」のセットを繰り返し、それを連ねていく中で文章を展開していく・・・というのが、小論で答案を作る際の実態になると思います。つまり・・・

(主張A→→論拠A1→→論拠A2) →→ (主張B→→論拠B1→→論拠B2) →→

・・・だとか、

(主張A→→補足A1→→補足A2) →→ (主張B→→補足B1→→補足B2) →→

・・・だとかいった構成で議論を進めるのが普通です。

その時に留意したいのが、ある「主張」―「論拠」のセットと、それと別の「主張」―「論拠」のセットとのつながりです。かりにひとつのセットの中で「論拠」と「主張(帰結)」との論理的関係が整合的であるとしても、それが別の「論拠」「主張」と抵触するようであれば、それは問題です。小論の文章は全体としてひとつの流れになるはずなので、「論拠」「主張」のセットを複数立てて論を構成する際に、セット「内」の矛盾や不整合だけではなくセット「間」の矛盾や不整合もあってはならない、ということです。「段落間で話がつながらない」・・・「段落間に矛盾がある」・・・。こうした「論理的飛躍」「論理的不整合」は、皆さんの答案にもあてはまりませんか?

つまりは、本文の最初から最後までが一貫した流れを持っていることが最低条件になるということ・・・これが「論理的一貫性」の問題です。

さて、「論理的飛躍」は慎重に吟味すれば見えやすいのですが、上記に加えて、一見そうは見えないが「飛躍」「不整合」になっているというケースを、二つほど紹介しておきます。皆さんが書いてきた答案にあてはまらないか、ご自身で考えてみてください。

第一に、「自分で提示した具体例が、そこから導き出される結論とつながらない」というケースです。自己体験や、時事的な事柄といった具体例は、うまく活用できれば皆さんの主張の論拠として効力を持ちますが、「具体例があれば議論になる」というわけでもありません。例えば、事例についてはこと細やかに字数を尽くして述べてあるけれども、「以上のことから・・・だと言える」に接続していかない・・・。「せっかく自分の知っていることなんだから、説明に加えたい」という気持ちが働くのかもしれません。その気持ちは分かりますが、そういう場合には、まず「いろいろ知っているということをアピールしたい」という気持ちが先走っており、それが本当に自分の言いたいことにつながっているかは吟味されていないことが多いですね。武器が暴走している典型例ですね。

第二に、「テーマ・課題がすり替わっている」というケースです。課題文なり設問文なりで与えられた課題についての話をしているつもりで、いつのまにやら自分の立ててきた議論に引っ張られて、問われていることとは違うテーマ、議論についての話に結末部がすり替わっていってしまう・・・。「医者は命をどう捉えるべきか?」という提題に対して、「脳死」を事例にとって話を進めているうちに、「脳死は認めるべきではない!」という主張で議論が閉じる・・・。これは、当初の目的を完全に見失っているケースの典型ですね。

・・・というわけで、まとめです。

答案が小論文として成立しているかどうかの基準として、本文の最初から最後までが一貫した流れを持っていることが挙げられる。段落の間、議論の間に本文全体の形を崩してしまうような飛躍や不整合がないかは、必ずチェックすること。

さて、第1回からここまでで、「小論文」という教科の一番根本のところをお話ししてきました。次回以降は、いよいよ具体的な答案の書き方について、注意事項を説明していきたいと思います。

安達 雄大

安達 雄大

昭和53年生まれ。名古屋大学文学研究科博士課程出身。学生時代より大手予備校で指導を開始。現在は現代国語講師として全国で活躍する傍ら、医学系予備校で小論文指導も手掛ける。日々たゆまぬ研究に裏付けられた切れ味の鋭い現代国語の講義と丁寧な小論文指導により、受験生から絶大な信頼を集める。

 

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