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小論文対策講座 第1回

小論文とは「考え」を述べるものであって「思い」を述べるものではない

これから、小論文をその様々な側面にわたってお話ししていきます。よろしくお願いします。

その始めとなる今回は、「小論文」という教科の一番根本のところをお話ししてみたいと思います。これからお話しするのは、小論文についての当たり前すぎるお話です。しかし、当たり前すぎるがゆえに、誰もが暗黙の前提にしてしまい、知らないままでいる人がいらっしゃるのではないか・・・そういうお話です。

小論文を構成する要件はいくつもありますが、いわく「出題者の意図を読み取る」・・・いわく「段落構成を明確に」・・・いわく「背景知識を正しく踏まえる」・・・。こうしたことはもちろん重要ですし、私自身もあらためてそれに触れる場を作ろうとは思っています。しかし、今並べてきたような要件に先立ち、それこそ「これを欠いたら小論文ではない!」と言える要素があります。それはズバリ、「考え」が述べられていることです。

もちろん、これでは何も判然としていません。「バカにしているのか?」と思う人もいらっしゃるでしょう。もう少し精確に説明してみます。ここでいう「考え」とは何か。それと同時に、考えではないものは何か。それを考えてみましょう。

小論文を書くということは、読んで字のごとく「議論」を立てるということです。「議論」で要求されているのは、それが読み手を説得できることです。ところで、相手を説得するために一番欠かすことのできないものとは、その主張に説得力を与えるための「理由」です。従いまして、先に言った「考え」とは、「理由」を伴っている「思い」のことです。

これを裏側から言えば、小論文ではただの宙に浮いた「思い」は問われません。いかに崇高な思いであれ、いかに人々から共感を得られそうな思いであれ、「理由」と切り離された思いや考えそれ自身は、小論文では有効性を持ちません。

これをもう少し具体化して、小論文の体裁は保っているが、およそ小論文としての最低限の条件を満たせていないケースを、想定上でいくつか紹介してみます。皆さんが自分で書いてきた小論文にあてはまるようであれば、早速ですが参考にしてみてください。

1 気づいたこと、感じたことの羅列

「・・・だと思った。次に、・・・だと感じた。・・・だと言えるだろう。オシマイ。」・・・という答案に、よく出会います。課題文や与えられたテーマを見て、言えそうなことを次々に書きならべているケースです。はっきり言って、採点者としては採点のしようがありません。「議論」によって組み立てられている「小論文」ではなく、「雑感」「印象」で埋め尽くされた「感想文」だからです。いちいちの「思い」「感じ」「言えそうなこと」に対して、答案内のどこかでその裏付けを対応させること・・・これが、小論文の出発点です。

更に話を一歩進めますと・・・

2 誰でも言いそうな常識論

・・・も、上に挙げたようなケースと同じ事態に陥ることが多いです。「誰もが認める常識論が、なぜ理由を伴わない思いと同じになるんだ?!」と、いぶかしく思う方もいらっしゃると思います。しかし、「常識である」、「誰もが同意する思いである」ということは、裏を返せば「誰にとっても当たり前に認められていることである」、もっと言ってしまえば「自明過ぎて議論する余地がない」ということです。こうした、議論の余地が生まれようもない常識を論拠に据えたり、それを結論としたりした時点で、「理由を固めながら自分なりの見解を説き進めていく」という行為の幅が、一挙に限定されてしまいます。なぜなら、「常識」は「議論の余地がない事柄」だからです。

以上が、「そもそも小論文になっていない答案」に一番多いケースです。しかし、話はそこにとどまりません。本人は「自分の考え」を書いているつもりでも、あるものに全面的に依存して、そうして出てきたものを「自分の考え」だと取り違えているケースも、やはり「そもそも小論文になっていない」というケースの一つです。すなわち・・・

3 課題文を要約して(場合によってはそのまま写して)、「筆者の言うとおり」で締めるタイプ。

あるいは酷い場合には、

4 「筆者の言うとおり」ということわりもなく、あたかも自分の議論であるかのように課題文を要約する(場合によってはそのまま写す)タイプ。

・・・というケースです。つまり、本来ならば「自分の考え」を提示すべきところを、課題文・・・つまり「筆者の考え」に依存するあまりに、課題文に張り付きそこから一歩も出ない、ただの「課題文の焼き直し」に堕している答案です。「筆者はこう言っている。そして、自分は筆者の言うとおり」とことわり書きがある場合はまだマシです(それでもそれは「自分の考え」ではないので採点使用がありませんが)。問題なのは、そうしたことわり書きもない場合です。そちらに至っては、「持論なし」どころかただの「パクり」です。

繰り返しますが、今挙げた1~4のケースは、皆さんの答案を見せていただいた際にかなりの頻度で見られるケースです。「自分はそんな答案は作っていない!」と思う人ほど、あるいはそう思うからこそ陥りやすい事態です。重々お気を付けください。

・・・というわけで、まとめです。

小論文で述べる事柄には、事柄ごとに必ず「自分で考えた理由」を付随させること。それが、ただの「思い」を、小論文において真に要求されている「議論」にしてくれます。

安達 雄大

安達 雄大

昭和53年生まれ。名古屋大学文学研究科博士課程出身。学生時代より大手予備校で指導を開始。現在は現代国語講師として全国で活躍する傍ら、医学系予備校で小論文指導も手掛ける。日々たゆまぬ研究に裏付けられた切れ味の鋭い現代国語の講義と丁寧な小論文指導により、受験生から絶大な信頼を集める。

 

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