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化学連載 第57回:化学反応速度⑧塩の加水分解

CH3COONaNH4Cl のように、弱酸-強塩基の塩や弱塩基-強酸の塩を純水に溶解すると、水と反応して H+OH- を放出して水溶液は酸性あるいは塩基性になりますが、これを塩の加水分解といいます。

このことは、以前に酸・塩基の所で扱いました。下図のように、CH3COOHNaOH で中和したり、NH3HCl で中和すると、中和点は前者が塩基性、後者は酸性になりますが、これは中和反応によって生じた CH3COONaNH4Cl が加水分解するためでした。

さて、今回は、質量作用の法則を用いて塩の水溶液の pH を求めます。

1) CH3COONa 水溶液

CH3COONa を水に溶解させると CH3COONa → CH3COO- + Na+ の電離が起こり、 CH3COONa は全て CH3COO- となります。

Na+ は反応しませんが、CH3COO- は水中の H+CH3COO- + H+ ↔ CH3COOH の反応をします。

しかし、水溶液中の H+ は極めて濃度が薄いので、実際は CH3COO-H2O と反応して、次の平衡が成立します。

CH3COO- + H2O ↔ CH3COOH + OH-

そしてこの反応により OH- 生じるため、水溶液は塩基性になるのです。

つぎに、C mol/LCH3COONa 水溶液の pH を、CH3COOH の酸の解離定数を Ka として求めましょう。

CH3COO- + H2O ↔ CH3COOH + OH- の平衡定数を K とします。

質量作用の法則より、K = ここで、[H2O] は定数ですので左辺に移項して K [H2O] = Kh と置きなおします。この Kh を加水分解定数と呼びます。

K [H2O] = Kh =・・・(※)

mol/L CH3COO CH3COOH OH
反応前 C 0 0
平衡時 C (1-h) Ch Ch

さて、ここで、加水分解度を h とします。
すると、弱酸の電離のように各濃度は右表のようになります。

これらを (※) に代入すると、Kh = となります。

ここで、h1 より十分小さな値なので (加水分解度は酸の電離度程度の値です)、1 - h ≒ 1 と置くことができます。

すると、Kh = Ch2 よって、

水のイオン積より、・・・(※2)

さて、これで [H+] が求まったように思えますが、Kh は勝手においた値なので、値が分かりません。そこで、Kh の値を求めてみようと思います。

(※) の右辺にを掛けると

これで Kh が求まりました。
これを(※2)へ代入すると、

2) NH4Cl水溶液

C mol/LNH4Cl 水溶液の pH を考えましょう。

NH3 の電離定数を Kb mol/L とします。 = Kh mol/L です。

NH4Cl は水溶液中で NH4+Cl- に電離します。Cl- は何とも反応しませんが、 NH4+H2O と反応して次の平衡に達します。NH4+ + H2O ↔ NH3 + H3O+ ここで、H3O+H+ にすると、NH4+ ↔ NH3 + H+

この平衡定数を Kh と置きます。質量作用の法則より、Kh = ・・・(※)

mol/L NH4+ NH3 H+
反応前 C 0 0
平衡時 C (1-h) Ch Ch

加水分解度を h とすると、各化学種の濃度は右表のようになる。

h1 より十分小さいとすると、1-h≒1 なので、
(※) より、Kh = = Ch2 よって、h =

以上より、[H+] = Ch =mol/L・・・(※2)となる。

つぎに Kh を求めます。

(※) の両辺にを掛けて、
Kh =

これを (※2) に代入して、[H+] = mol/L

平野 晃康

平野 晃康

株式会社CMP代表取締役
私立大学医学部に入ろう.COM管理人
大学受験アナリスト・予備校講師

昭和53年生まれ、予備校講師歴13年、大学院生の頃から予備校講師として化学・数学を主体に教鞭を取る。名古屋セミナーグループ医進サクセス室長を経て、株式会社CMPを設立、医学部受験情報を配信するメディアサイト私立大学医学部に入ろう.COMを立ち上げる傍ら、朝日新聞社・大学通信・ルックデータ出版などのコラム寄稿・取材などを行う。

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