第28回:電気分解【さまざまな電気分解】
③ 液体のNaCl の電気分解(融解塩電解)
NaCl(液体)の電気分解で、電極板に白金を用いた場合を考えましょう。
陽極 : | 極板はPtですから、陽極板の溶解は起こらず、Cl- が酸化されて Cl2 が生じます。 |
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2Cl- → Cl2 + 2e- | |
陰極 : | H2O も他の陽イオンもありませんから、Na+ が還元されて Na が生じます。 |
Na+ + e- → Na |
固体の NaCl を上図のようなL字型のガラス管に入れ、下からバーナーで強熱して行います。この場合、水溶液ではないので陰極で反応するのは Na+ しかありません。したがって、陰極では Na の単体が発生し、陽極では水溶液の場合と同じように Cl- が反応してCl2が発生します。
このように、塩の溶液を電気分解して単体を得ることを、塩の融解塩電解と言います。融解塩電解として有名なのは、次に紹介する。Al の製法(ホール・エルー法)で、私大医学部でも頻出の反応です。
④ 液体のAl2O3の電気分解(ホール・エルー法)
ホール・エルー法は、炭素を電極にした Al2O3 の融解塩電解により、Alの単体を得る方法です。
陽極 : | 極板の炭素と酸素イオンが結びついて一酸化炭素(または二酸化炭素)が生じます。 |
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C + O2- → CO + 2e- | |
陰極 : | H2O も他の陽イオンもありませんから、Al3+ が還元されてAl が生じます。 |
Al3+ + 3e- → Al |
Al2O3 は融点が2000℃と非常に高いため、Al2O3 を強熱して融解させるのはコストの面で適切とは言えません。そこで、融点が1000℃の Na3AlF6(氷晶石)を融解させて液体とし、そこに Al2O3 を溶解させます。
こうすることで低い温度で Al2O3 の液体を作ることができ、Al の生成コストを減らすことができるのです。(とはいえ、加熱は電熱線を用いて行う事から、Alの製錬は高いコストが必要であることに変わりはなく、徹底したリサイクルシステムによりAl製品の価格は低い価格に抑えられています。

平野 晃康
株式会社CMP代表取締役
私立大学医学部に入ろう.COM管理人
大学受験アナリスト・予備校講師
昭和53年生まれ、予備校講師歴13年、大学院生の頃から予備校講師として化学・数学を主体に教鞭を取る。名古屋セミナーグループ医進サクセス室長を経て、株式会社CMPを設立、医学部受験情報を配信するメディアサイト私立大学医学部に入ろう.COMを立ち上げる傍ら、朝日新聞社・大学通信・ルックデータ出版などのコラム寄稿・取材などを行う。