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第10回:イオン結合とイオン性物質・金属結合と金属結晶

イオン結合とイオン性物質

イオン結合は、金属と非金属が結合するときに生じる結合です。例えば、NaとClが結合してできるNaClの結合はイオン結合です。

Clは第5回で出てきたように最外殻電子が7個の非金属で電子を引き付ける力が強く、陰イオンになりやすい元素です。一方、Naは最外殻電子が1個の金属で電子を引き付ける力が弱く、陽イオンになりやすい元素です。

このため、NaとClが近づくとNaは電子をClに渡してNa+になり、電子を受け取ったClはCl-になります。

ナトリウムイオンと塩化物イオン

すると、Na+は正に帯電、Cl-は負に帯電していますから、この間にクーロン力が働いて引き付け合い、結合が生じます。このように陽イオンと陰イオンがクーロン力によって引き付けあう事によって生じる結合をイオン結合といいます。

クーロン力は、単純に正電荷をもつ陽イオンと負電荷をもつ陰イオンが引き付けあっているだけですから陽イオンの周りには陰イオンが、陰イオンの周りには陽イオンがどんどん集まって大きなかたまりを作ります。このようにしてイオンがクーロン力によって結びついて生じる物質をイオン結合性物質と言います。

イオン性物質は基本的にNaCl、CaCl2、CaOなど金属元素+非金属元素の組み合わせでできている物質ですが、NH4Clのようにアンモニウムイオンが含まれる化合物は、非金属元素のみで生じる物質でありながらイオン性物質です。NH4+ (アンモニウムイオン)とCl-(塩化物イオン)の間に生じるイオン結合によって生じる物質なのです。

さて、NaClの結晶を下図に示します。陽イオンのナトリウムイオンと、陰イオンの塩化物イオンが交互に並んでいるのが分かりますね。イオン性物質の結晶は、このようにどこからどこまでで1つということができません。

したがって、イオン結合性物質を化学式で表すときには、その物質をどのようなイオンがどのような割合で構成しているかで表します。これを組成式と言います。例えば、NaClなら、Na+とCl-が1:1の割合で構成している物質という意味です。

塩化ナトリウム(NaCl)の模式図

組成式 組成
CuCl2 Cu2+とCl-が2:1の割合
NaI Na+とI-が1:1の割合
CaO Ca2+とO2-が1:1の割合

イオン結合は共有結合と同じくらいのとても強い結合です。したがって、イオン性物質の結晶は融点が高く、NaClは融点が800℃を越えますし、MgOなどは2800℃もあります。

次の表の融点の違いがなぜ生じるかは説明できるようにしておきましょう。大学入試でもかなり頻出の内容です。

ナトリウムのハロゲン化物 NaF NaCl NaBr NaI
融点(℃) 993 801 747 651
2族元素の酸化物 MgO CaO BaO  
融点(℃) 2826 2572 1918  

まず、ナトリウム(1族元素)のハロゲン化物と2族元素の酸化物を比べてみると2族元素の酸化物の方が融点がずっと高いのが分かりますね。これは、ナトリウムのハロゲン化物は1価の陽イオンと1価の陰イオンのイオン結合であり、2族元素の酸化物は2価の陽イオンと2価の陰イオンのイオン結合だからです。クーロン力は電荷の大きさに比例するため、2族元素の酸化物の方がイオン間に強いクーロン力が生じるのですね。

次に、ナトリウムのハロゲン化物どうしで比較してみます。すると、NaFが融点が最も高く、NaCl、NaBr、NaIとハロゲンの周期が大きくなるほど融点が下がっていきます。これは、周期が大きいものほど半径が大きくなるためです。クーロン力は結合距離の2乗に反比例するため、周期が大きいものほどクーロン力が弱くなってしまうわけです。
この2つは重要だから覚えておきましょう。

また、イオン性結晶は硬い物質です。結合が強いため当然ですが、一方で、衝撃を加えるとあっけなく割れてしまいます。これを「硬くてもろい」と表現します。

「硬くてもろい」のは衝撃を加えると、ひずみができて、陽イオン同士、陰イオン同士が向かい合うため、反発力が働いて結合が切断されてしまうからです。

強い外力を加えると、結晶構造がずれて、陽イオン同士、陰イオン同士が向かい合い、斥力が働いて結晶が割れてしまう。

イオン性物質を構成している陽イオンと陰イオンはそれぞれ正、負に帯電していますが、固体のときは全く動く事ができません。そのため、固体のイオン性結晶は電気伝導性がありません。

しかし、強熱して液体にしたり、水に溶かすと陽イオンと陰イオンに分かれる(これを電離といいます。)ので、陽イオンと陰イオンが自由に動く事ができるようになり、電気伝導性を示すようになります。

固体のイオンと溶解液あるいは溶液のイオン

水に溶かしたときに電離する物質を電解質と言います。全てのイオン性物質と酸や塩基など一部の分子性物質、具体的に言うとHClやH2SO4が電解質に含まれます。

また、水に溶かしたとき全て電離する電解質を強電解質、一部だけが電離する電解質を弱電解質といいます。

金属結合と金属結晶

今回はもう一つ、金属結合と金属結晶について説明しようと思います。金属元素というのは、電子を引き付ける力が弱く、陽イオンになりやすい元素でした。

金属元素同士が結びつく場合は、お互いに自分の最外殻電子を押し付けようとします。しかし、同じ種類の金属原子同士ではどちらかが電子をもらうという現象は起こりません。金属原子は自分の持っている最外殻電子を他の金属原子との間に捨てて、陽イオンになってしまいます。すると、捨てられた電子は金属の陽イオンの間を自由に動き回ることのできる自由電子になります。

Naの最外殻電子が自由電子になる

すると、捨てた電子と陽イオンがクーロン力でひきつけあい、その結果金属イオン同士が結びつきます。これが金属結合です。また、金属結合によってできた物質を金属結晶といいます。金属結合はイオン結合と同様にどこまでも広がっていきます。したがって、金属もNaやFeなどのように組成式で表します。

さて、陽イオンを結び付けている電子は、金属が捨てたものですから自由に動く事ができます。このような電子を自由電子と言います。金属に電圧を加えると、自由電子が移動して電流が生じ、電気を通します。このような金属の性質を電気伝導性といいます。

電圧をかけると自由電子が移動する。→電流が流れる(電気伝導性)

金属は、たたいたり、のばしたりしても、電子が動いて結合を保とうとするため、簡単に結合が切れたりしません。この性質を展性、延性といいます。

力を加えると陽イオンの位置がずれるが、陽イオンの位置に合わせて自由電子が移動して、結合を保つ

また、自由電子は光を反射するため、金属は特有の光沢を持ちます。これを金属光沢といいます。

これら4つの性質(電気伝導性・展性・延性・金属光沢)は金属の特徴的な性質ですから、覚えておいてください。

イオン性結晶と金属結晶の性質のまとめ

最後に、イオン性結晶と金属結晶の性質をまとめておきます。

名称 イオン性結晶 金属結晶
構成粒子 陽イオンと陰イオン 陽イオンと自由電子
化学式 組成式 組成式
結合の種類 イオン結合 金属結合
硬さ 硬いがもろい 硬いものも軟らかいものもある
沸点・融点 高い 高いものも低いものもある
(タングステンは3400℃。Hgは常温常圧で液体)
電気伝導性 固体はない
液体・溶液はある
ある

この表の性質に加えて、金属結晶には展性・延性と金属光沢があることを覚えておきましょう。

あ、そうそう、大事なことを忘れていました。
元素の組み合わせと生じる結合は忘れないように。

  元素の組み合わせ 結合 生じる物質
1 非金属と非金属 共有結合 分子性物質
2 14族非金属同士 共有結合 共有結合性結晶
3 非金属と金属 イオン結合 イオン性結晶
4 金属と金属 金属結合 金属結晶

※NH4+と非金属の陰イオンの組み合わせでも生じる。

さて、今回はこれでおしまいです。お疲れ様でした。

平野 晃康

平野 晃康

株式会社CMP代表取締役
私立大学医学部に入ろう.COM管理人
大学受験アナリスト・予備校講師

昭和53年生まれ、予備校講師歴13年、大学院生の頃から予備校講師として化学・数学を主体に教鞭を取る。名古屋セミナーグループ医進サクセス室長を経て、株式会社CMPを設立、医学部受験情報を配信するメディアサイト私立大学医学部に入ろう.COMを立ち上げる傍ら、朝日新聞社・大学通信・ルックデータ出版などのコラム寄稿・取材などを行う。

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