はじめに

はじめまして。医学部受験予備校COSMOS(コスモス)の”山K”です。

この記事を読んでくれている君は、多かれ少なかれ「医学部に行きたい!」という気持ちを持っていることでしょう。

医学部への進学熱が収まる気配はなく、年々厳しくなっているのが実状です。しかしそれでも「立派な医師になりたい!」という強い気持ちを持っている人もいるでしょう。そんなあなたに、少しでも役に立てるような記事を書いていこうと思っています。

私は数学科なので、基本は数学の勉強法について記事を書いていきます。ただ今回は初回ということで、医学部を受験するにあたって、難易度について確認したいと思います。

医学部の難易度を実感せよ

今回のテーマは「医学部の難易度を実感せよ」です。

高校2年生の時点で、医学部の難しさを肌で感じている人はほとんどいないと思います。家族や先輩から「医学部に合格することがいかに難しいか」ということは聞かされてはいますが、それは単なる情報で、実感を伴ってはいません。

認識が甘い高校生

何となく「頑張って勉強すれば、自分は合格するかも」と思っている人は多いと思います。例えば以下のような感じでしょうか。

「医学部は難しいらしいなあ。今の成績ではちょっと無理かも知れない。でも、これまでは勉強してこなかっただけだ。これから本気で勉強すれば、1年あるし、自分は合格するかも」

甘い。甘すぎる。

「本気で勉強すれば」合格できる?

「本気で勉強する」のは必要条件であって十分条件ではない。「本気で、必死で、勉強してきた」人の中から、合格者が出るのである。君は本当に合格する気があるのか?まあそんな人ばかりではなく「いえ、私は医学部が難しいことは知っています。覚悟しています」という人もいるかもしれません。

しかし、それでもやはり、本当には分かっていない人が多いと思います。必死で頑張って勉強しても大半の人が浪人しているのが実状なのです。

合格するために偏差値はどれくらい必要か

ここで、河合塾が発表している偏差値ランキング表から作成した、以下の表を見て下さい。偏差値ごとに、国公立大学医学部、私立大学医学部が何校あるかを示したものです。

偏差値 国公立大学 私立大学
72.5以上 2 1
70.0以上 4 2
67.5以上 17 11
65.0以上 23 12
62.5以上   4

(※国公立と私立は偏差値の計算方法が異なるので、単純に比較はできない)

上記の表では、国公立も私立も偏差値65~70くらいにほとんどの大学が入っています。私見ですが、私の予備校講師の経験を元に、荒っぽく言い切ってしまうと、国立に合格するには偏差値70近く、私立に合格するには偏差値65前後が必要です。少なくとも、偏差値が60を超えてこなければ話になりません。おそらく、受験に詳しいあなたの身近な人に聞いても、似たような答えが返ってくるでしょう。

実は、20年ほど前であれば、偏差値50くらいで入れる私立大学医学部がゴロゴロありました。それに比べれば、最近の医学部希望者は大変なのです。

偏差値と集団の位置関係

「頑張ったら半年で偏差値が50から55に上がりました。このままいけば、1年で偏差値が10上がるので、合格ラインの偏差値65に届きそう!」
そんなにうまくいくでしょうか?

偏差値について、もう少し詳しく見てみましょう。偏差値60や70というのは、いったいどれくらいの難易度なのでしょうか。以下のグラフを見て下さい。これは統計学の初歩で学ぶ正規分布表をグラフにし、横軸を偏差値にしたものです。

偏差値と集団の位置関係

多くのデータはこのような釣り鐘形の形になることが多く、平均値周辺にたくさんのデータがあり、平均からはずれているところには少なくなります。通っている学校の生徒全員について、身長や体重を調べたら、おそらくこんなグラフになるでしょう。そしてテストの点数なども概ねこのような正規分布に従うことが知られています。

グラフから分かるとおり、偏差値70以上の部分の面積は非常に小さいです。驚くなかれ、全体の約2.5%です。自分がその2.5%に入っているという自信がある人はどのくらいいるでしょうか。

分かりやすく例えるならば、クラスが40人なら成績トップ、学年が200人なら成績上位5人の中に入る、ということです。これがどのくらい大変なことか、我が身に置き換えて考えてみましょう。国公立の医学部に現役で合格する人はこのあたりの層だといっていいでしょう。

では偏差値65以上ならば?それでも、上位7%です。クラスが40人ならトップ3、学年が200人なら成績上位14人の中に入る、ということです。少しハードルは下がったものの、大半の人にとっては依然として厳しいハードルでしょう。

なぜか「医学部を受けます!合格します!」と堂々と言う人に、とりあえず学年で(例えば)トップ10に入るよう頑張れ、というと「いや、それは無理。成績がいい人がいっぱいいます」と言い訳します。おかしくないですか?

医学部に行くとは、そういうことなのです。周りを見回して「絶対に成績で勝てそうにない」人たちと遜色ないレベルまで、自分の成績を上げなければ合格はできないのです。

偏差値40~60には、全体の約7割の人が含まれています。私が指導してきた実感だと、偏差値50から60に上げることはそう難しいことではありません。しかし、偏差値60から70に上げるのは容易ではありません。同じ+10でも意味が全然違うのです。

”何となく”では合格できない

最初に私はこう書きました。
『何となく「頑張って勉強すれば、自分は合格するかも」と思っている人は多い。しかしそれは甘い。』

少しは実感できただでしょうか。
「厳しい言葉だなあ。医学部受験を止めろ、ということかなあ」
そうではありません。

私が言いたいのは、まず「現実から目を背けるな」ということです。

医学部への進学は、”何となく”勉強していて合格できるものではないのです。だからこそ受験するのであれば’本気で'腹をくくって欲しいのです。

医学部志望の受験生の中には、行きたい理由があいまいな人が少なくありません。

「(何となく)親が医者だから」
「(何となく)儲かりそうだから」
「(何となく)安定してるから」・・・などなど。

そんな人は、浪人年数を重ねてしまう可能性が高いと思います。

勉強をしてもなかなか成績が上がらなかったり、上がったとしても模試の判定がE判定ばかりだったり・・・そんなことはよくあることです。

”何となく”医学部を志望している人は、厳しい現実の受験勉強に対峙したときに、意志の弱さから、勉強から逃げる場面が多くなるのです。

現実の厳しさを認識した上で「私は本当に医学部へ行きたいのか」「本気で勉強していく覚悟はあるのか」を考えて欲しいと思います。”何となく”では何もつかむことはできません。

それでも医学部へ行きたい人

そして、それでも「私は医学部へ行く。立派な医師になる」というならば・・・おめでとう、あなたはようやく医学部受験のスタートラインに立ったのです。

どんなに遠い場所でも、どんなに高い山でも、1歩ずつ進むしかないのです。そしてその1歩は、確実にゴールへと近付いているのです。

腹をくくることができたあなたのために、どの方向に進んだ方がいいか、どのような進み方をした方がいいか、それらをこの連載記事でアドバイスしていく予定です。

ゴールに向かって必死に走るあなたの、伴走者になれれば幸いです。

<今週のK-Word>

“何となく”合格することは絶対にない。