私立・国公立大学医学部に入ろう.COM編集部

【1】問題の概要と特徴

(概要)
今回のモデル問題では従来のセンター試験に比べ、「思考型」、「活用型」の問題が増加し、生徒の思考力、活用力が試された。また従来の選択肢問題に加え、記述型の問題が導入され、説明する力、数式・図・表を用いての表現力が問われた。さらには一つの問題に対して複数の考え方が求められ、多様で柔軟な思考力も問われた。

問題の題材自体は特に目新しいものはなく、参考書や問題集で一度は見かけたことのある問題ではあるが、問いかけの方法が従来のセンター試験の問題とは異なるため、初めて経験する生徒にとっては戸惑う問題であると予想する。

以下、問題別に見ていく。

[モデル問題例3[1](動点による四角形の面積)]

[モデル問題例3[1](動点による四角形の面積)]

大学入試センターの出題のねらいにも書かれているように、従来までのセンター試験の出題方法の多くは、問題文の解決の構想とプロセスが文脈の中に提示され、その文脈(一種の誘導)に従って、順を追って解いていく問題が多かった。

つまり、前半で具体的な事例や簡単な場合を考えさせ、その考え方を後半の一般的な場合に適用するという流れが多かった。

しかし今回の新テストにおいては、その問題解決の構想の第一歩を自分自身の力で発見していく力が求められている。本問の例で言えば、従来のセンター試験であれば、「何を変数とみるか」については、問題文で与えられている場合が多かったが、この問では自ら変数を定め、その変数を用いて解決していくという問題であった。

また、問題文が長く(1)~(3)と条件が変わっていくので、問題文の条件を正しく理解し、状況を正しく把握することが重要であり、複数の動点に対して、どの点に注目をし、何を変数にするかによってその後の方針が変わってくる。

また、実際に具体的な例を図示しながら、図形の変化を把握する必要があり、(2)では点Eが正方形の内部にあるか外部にあるかで、「場合分け」をしなくてはならない。

「場合分け」については、従来のセンター試験では「場合分けの基準」が問題文の中に示されることが多い中、本問では「場合け」することを自ら気づかなくてはならない。

(3)においても、Fのy座標の正負によって「場合分け」する必要があり、各場合についてグラフ等を用いて手際よく処理する能力も必要である。さらに本問で単なる求値問題ではなく、FとTの二つの図形の関係について状況把握が出来ているかどうかが問われ、深い洞察力が求められる。

[モデル問題例3[2]三角比と二次方程式の融合問題]

[モデル問題例3[2]三角比と二次方程式の融合問題]

本問は一つの問題に対して、数式で処理していくか、図形的に処理をしていくかという複合的、融合的な考察力が求められる問題である。

題材としては、「三角形が一つに定まらない条件」として有名な問題ではあるが、その理由を「二次方程式の解の存在条件」に帰着させる方法と「作図による」方法の二通りの方法で考えさせる設定となっている。

この複数の考え方をさせるという出題形式は従来のセンター試験ではあまり見られない流れである。(4)は前半で考えた二種類の方法のどちらを用いても解くことが出来る問題ではあるが、どちらの場合で考えた方がより考えやすいかを判断する力が問われる。

いずれの考え方においても「場合分け」が必要となり、新テストでは「場合分け」を必要とする問題の出題が極めて高い。

また、本問は「三角比」と「二次方程式の解の配置」の二つの内容が融合されており、新テストではこのような「融合問題」という形式が増えると予想される。特に図形における条件を数式で表現させる問いは色んなバリエーションが考えられるので今後も増えるであろう。「三角比」は数学Ⅰの分野では唯一の「図形分野」で外せないことを考えると、今後のためにも三角形の成立条件、正弦定理、余弦定理のお互いの同値関係については是非確認しておく必要があろう。

[モデル問題例4[1]]

[モデル問題例4[1]]

「日常生活における数学の活用」をテーマとする問題であるが、題材としては問題集などでも良く見られる頻出問題で、過去の入試でも度々出題されている。
(数年前の京大文系にも同じテーマの問題が出ている)
問題文が長いので、まずは正しく題意を把握することが大切である。「銅像を見込む角度が最大となる」場合について考える問題であるが、誘導に従いステップを一つずつ踏みながら考えていけば良いので難易度としてはそれほど高くない。

前半は「余弦定理」と「正弦定理」の利用に気づくことが出来れば問題ない。ただし、単に、「余弦定理」、「正弦定理」という定理を知っているというレベルでは、何をすれば良いのか迷うかもしれない。日頃から単に定理、公式を丸暗記するのではなく、各公式、定理の導き方やどのような場面で使う知識なのかを意識しながら学習する必要があろう。

後半は、与えられた条件を図示できれば、中学3年生で習う「三平方の定理」を用いることによって簡単に解決できる。ここでは「条件を読み取る力」、「図を用いて正しく表現できる力」が求められる。「方べきの定理」、△ABPの面積、「余弦定理」の利用等でも解くことができ、「多様なものの見方」も求められる問題であった。

また本問では、前半で具体的な場合で考え、後半でその考え方に基づいて一般の場合を解決するという流れになっており、問題文の条件(流れ)にそって、問題解決への道を構築していくという「題意把握力」と「構想力」が求められる。