前の章で原核細胞と真核細胞は核の様子と細胞の大きさが異なることを学びました。ここで次のような疑問が浮かびませんか。「核の様子も違うし、細胞の大きさも違うのなら、細胞の中身も違うんじゃないの?」その通りです、原核細胞と真核細胞では細胞の中身の構造が大きく異なります。さらに言えば、真核細胞のなかでも動物細胞と植物細胞とでも構造が異なるのです。この章では主に細胞内の構造について扱っていきます。

それぞれの細胞どうしの違いを見ていく前に、まずは細胞の中身には一体どのようなものが含まれているのかというところから始めます。

細胞の中にはさまざまな細胞内小器官が存在します。細胞内小器官とは特定の働きをもつ構造のことをいいます。例えば、車はハンドルやエンジン、タイヤなど様々な部品から出来ていますね。この例では車が細胞にあたり、ハンドルやエンジンなどが細胞内小器官に当たるわけです。ここでは細胞内小器官の働きをまとめるとともに、その役割をイメージのしやすいなるべく一単語で言い表していきます。

司令部、コントロールセンター。細胞が何か行動をしようとする際に指示を出します。体全体でいう脳にあたる部分と捉えるとわかりやすいです。
染色体
設計図。核の中に含まれていて、さまざまなものの情報を保存してあります。
ミトコンドリア
発電所。体が動くのに必要なエネルギーを作ります。
ゴルジ体
運送屋。細胞内で作ったものを細胞外へ、細胞外から取り入れたものを細胞内の各所へ送ります。
小胞体
デコレーション。合成されたタンパク質に様々な加工を施します。タンパク質をデコっているわけです。
中心体
カウボーイ。動物細胞が分裂するときに、紡錘糸という「ロープ」を投げて染色体をたぐり寄せます。
リボソーム
職人。黙々とタンパク質を作っています。作ったタンパク質は小胞体がデコってくれます。
葉緑体
畑。太陽の光のエネルギーを使って糖分を作っています。
リソソーム
解体業者。消化酵素を使って不要なものを分解しています。
液胞
倉庫。活動していくうえで必要なものを蓄えておきます。動物細胞では小さくあまり発達していませんが、植物細胞ではよく発達しています。
細胞骨格
骨、幹線道路。細胞が形を保ったり移動したりするときに骨組みとして働きます。また、細胞の中で物質を移動させるときには道路としての役割を果たします。(図2:細胞内小器官のイメージ)

いかがでしょうか。それぞれの細胞内小器官には多くの働きがありますが、まずはざっくりとしたイメージをつかんで頂いてから、そのあとで少しずつ肉付けしていくとよいでしょう。

ここでひとつ受験対策も兼ねて原核細胞、真核細胞がもつ細胞内小器官と、動物細胞と植物細胞の違い、そして二重膜でできている細胞内小器官の3つのことがらについて触れておきましょう。

原核細胞は真核細胞に比べて簡単な構造をしていますから、もっている細胞内小器官も少ないです。ですから原核細胞が持っているものを覚えておくとよいですね。原核細胞が持っているのは、以下の3つのみです。

原核細胞が持っているもの:染色体、細胞骨格、リボソーム

これらを細胞壁で囲んだものが原核細胞です。

続いて動物細胞と植物細胞についてです。これらはどちらも真核細胞に含まれるのでした。同じ真核細胞というグループに含まれるのですから、ほとんどの細胞内小器官を共通に持ちます。したがって逆に共通ではないものを覚えるとわかりやすいです。以下に共通ではないものを示します。

動物細胞のみが持つもの:中心体
植物細胞のみが持つもの:葉緑体

真核細胞は細胞膜で囲われていますが、植物細胞はさらに細胞壁で囲まれています。

なお、やや細かい知識ですが、コケ・シダ植物は中心体を持つことが受験で問われていますから、ここを押さえておくと差がつくでしょう。

最後に二重膜でできている細胞内小器官についてです。ほとんどの細胞内小器官が一重膜でできていますが、以下の3つは二重膜でできています。

二重膜でできている細胞内小器官:核、ミトコンドリア、葉緑体

核は核膜で、ミトコンドリアと葉緑体はどちらも外膜と内膜という2枚の膜で覆われています。